────一人や二人じゃない。
何十人、いや、何百人という人間の軍勢が、この惨劇の舞台を取り囲もうとしていた。
大勢の足音は、確実にこの倉庫へと近づいて来ている。
「蓮、まずいです……! 囲まれて──」
李兎の焦った声と同時に、倉庫の扉が左右に大きく開け放たれた。
俺はとっさに身構え、鋭い視線で入り口を睨みつける。
────なだれ込んできたのは、夜の闇に紛れるような黒いスーツに身を包んだ男たちの集団だった。
統率された無機質な動きで、次々と倉庫内を埋め尽くしていく。
……全員がガタイのいい体躯をしており、素人ではないプロの威圧感を放っていた。
(敵の増援か……っ!?)
由良にやられたダメージが残る身体に鞭を打ち、俺は李兎たちを背に庇いながら、最悪の乱闘を覚悟した。
しかし──。
「……え?」
思わず、呆気の取られた声が漏れた。
黒服の男たちは、倉庫の真ん中で警戒を剥き出しにしている俺たちに、一瞥すらもくれなかったのだ。
まるでそこに人間など存在していないかのように、俺たちの横を淡々と通り過ぎていく。



