冷たい床に顔を押し付けられ、背中を容赦なく押さえ込まれている。
身動きが、一ミリも取れない。
(速すぎる……。なんだよ、この力……っ!)
全国イチの暴走族の総長を張っているこの俺が、反応することすらできずに、一瞬で組み伏せられた。
────いつも無表情で何を考えているか分からないと思っていたアイツの、底知れない圧倒的な強さに、俺の心臓は恐怖と驚愕で激しく波打った。
(いや、四月の一件から、俺は由良のことを警戒していた。だが、これほどまで実力差があるなんて────)
「お前らも、早くここから離れた方がいい」
頭上から、不意に感情の抜けた冷たい声が降ってきた。
そして────
背中に乗っていた重みが、ふっと消える。
────ゆっくりと痛む上体を起こすと、由良はすでに俺たちに背を向け、倉庫の出口へと歩き出していた。
引き留めることすら許さない圧倒的なオーラを纏ったまま、アイツは一度も振り返ることなく、闇の中へと消えていく。
「蓮……っ! 大丈夫か!?」
彼が去るのを見届けていた陽人が、ハッとしたように慌てて駆け寄ってきた。
俺は床に手を突き、悔しさに歯を食いしばりながら、由良の去った暗闇を睨みつける。
──ザッ、ザッ、ザッ……。
その時、倉庫の外から不穏な音が響いてきた。
「……え?」
陽人が動きを止める。
耳を澄ますと、夜の静寂を切り裂くように、大勢の、信じられない数の足音がこちらに向かって近づいてきている。



