君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~


「こっちか………?」


最後の曲がり角を強引に曲がった瞬間、
視界に飛び込んできた光景に、俺の心臓は激しく跳ね上がった。



そこには、統制の取れた不気味な動きを見せる黒服の男たちと、
それに対し血反吐を吐きながら抗っている俺の仲間たちがいた。


……………問題は、敵の多くがその手に"鈍い銀色の光"を握らせているということ。

拳銃。
この街の小競り合いには似つかわしくない、決定的な死の道具。

そんなものと素手で渡り合えば、結果がどうなるかなど、考えるまでもなかった。


圧倒的な不利。
絶望的なまでの戦力差が、冷たい汗となって俺の背筋を伝う。




「っ、裕太(ユウタ)!?」


弾かれたように声のした方を見ると、
背後から無機質な銃口を突きつけられている裕太の姿が、スローモーションのように視界に張り付いた。


「やめろっ!!!!」


喉が裂けるほどの怒鳴り声を上げ、自分へと標的を向けさせようと、無我夢中で叫ぶ。


…………頼む、裕太。
頼むから、今すぐそこから逃げてくれ。









─────そんな願いも虚しく。



「お前が………総長か?」

「っ、」


死神の指先が触れたかのような錯覚。
側頭部に、逃れようのない重みを持った銃口がゴリリと押し付けられた。



チラッと視線だけで、隣に立つ影を追う。


そこにいたのは、驚くほど整った顔立ちをした、黒髪黒目の男だった。
まるで精巧に作られた彫刻のように冷たく、静かな佇まいでそこに立っている。



けれど、その闇を凝縮したような研ぎ澄まされた瞳に見据えられた瞬間、俺の背筋を言いようのない悪寒が駆け抜けた。


コイツ………

…………まったく、気配を感じなかった。



本能が警鐘を鳴らしている。
………こいつは、今まで相手にしてきたような”不良”とは次元が違う。




グッと、男が引き金を引く指に力を込める。
逃げ場のない死を目前に、奥歯を噛み締め、痛みに覚悟を決めたその時──────。