どす黒い感情が足元から這い上がってくるのを感じながらも、私は顔の筋肉を無理やり引き上げ、完璧な“仮面”を被り直した。
「しかも、全国No.1!? 蓮さんって、もしかしてもの凄く強い人なんですか……!?」
ニコニコと無邪気に笑う仮面の下で、衣服に隠れた拳を、爪が手のひらに食い込むほどきつく握り締める。
あなたは今、私がどんな気持ちでここに立っているのかも知らない。
帰りたくても、もうあの日々には帰れない。
………そんな私の行き場のない絶望を、あなたは理解しようともしない。
(………ほんと、イライラする)
私の張り詰めた内面など露知らず、蓮さんは小さく鼻で笑って肩をすくめた。
「そうか?……でも、俺より強い奴なんて世界には沢山いるけどな」
「えー、じゃあ例えばどんな人ですか?」
────会話をつなげるための、ただの些細な質問のつもりだった。
彼を調子に乗らせて、チームの情報を引き出すための罠だったはず、なのに──。
「………氷晶の五戦華、とか?」
「っ、!?」
喉の奥が、一瞬で凍りついた。
────完全に、油断していた。
彼の口から出てくるはずのないその名前に、作り物の笑顔がひび割れそうになるのを、私は必死で堪えた。



