「────殺されたんです」
「……は?」
一瞬、その言葉の持つ意味が俺の頭の中で全く追いつかなかった。
“殺された”という悍ましい単語だけが、目の前の現実から切り離されて宙にぽつんと取り残される。
それは、潮騒の響くこの静かな海岸の空気に、あまりにも不釣り合いで似合わない不吉な言葉で。
暴力なんて日常みたいに転がってる世界にいるはずの俺でさえ、思わず思考が止まる。
今さら笑い飛ばせるような、そんな軽い冗談の温度なんかじゃないことは───何よりも、こいつの凍りついた瞳がそれを許さなかった。
「目の前で……ちょうど、この辺りです。僕たちの思い出の場所で、兄は拳銃で心臓を撃ち抜かれました」
まるで他人の身に起きたことでも語るかのように、あまりにも淡々と、由良の声が夜の闇に落とされる。
けれど、その容赦のない一言だけで、今まで耳を占めていた潮騒の音が遥か遠くへと乱暴に押しやられていく。
激しく寄せては返す波の音が、急に自分たちのいる現実とは全く関係のない、どこか別の世界の音みたいに感じられた。
(……そうか)
ここにきて今さら、これまであいつに対して抱いていた疑問の数々が、一本の線となって繋がっていく。



