君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



横顔を見つめながら、胸の奥で燻る熱を必死に押し殺す。


………男だとか女だとか。

そんな境界線は、とっくに意味を失っていた。



俺の心の中にあるのはもう、そんな安っぽい理屈なんかじゃない。


ただ、この目の前にいる“由良”という存在そのものに、どうしようもない力で引き寄せられているという、抗いようのない事実だけだった。





………たとえこれが、誰にも祝福されない茨の道だとしても。

お前がさっき愛おしそうに呼んだ“ゆう”という名前に、俺がなることはできないとしても。



───それでも、俺は。


夜風に儚く揺れる細い髪に、拒まれる恐怖を抑えながら、そっと静かに手を伸ばした。


まるで触れたら壊れてしまう硝子にでも触れるみたいに、慎重に、慎重に指先を這わせる。



指先に触れたその感触が、あまりにも柔らかくてあたたかくて──逆に胸が締め付けられるほど怖くなる。



どう転んだって俺のこの”感情”は報われない。

……そんなことくらい、他人に言われなくたってとっくに分かりきっている。



でも───それでも構わないと思ってしまう自分が、なによりもタチが悪い。




今はただ、この騒がしい潮騒の中で、こいつのすぐ隣に立っていられる──今は、それだけでいい。


───そう自分に言い聞かせて、そっと目を閉じた、その瞬間だった。