ドス黒いほどの独占欲を孕んだ言葉が、喉の奥まで出かかっては、形を失って崩れていく。
「………っ……///」
熱い吐息が漏れて、胸が苦しいほどに息が詰まる。
今まで自分が上の立場で“守るべきもの”だと思っていた存在が、”命を懸けてでも守りたいもの”へと変わる瞬間。
その境界線を越えるのは、あまりにも一瞬だった。
すべてが音を立てて崩れていく。
これまで積み上げてきた価値観も、理屈も、全部、全部………。
───目の前で、世界が音を立てて反転する。
遠くにある灯台の白い光が、夜の闇に浮かび上がる俺たちの背中を静かに照らしていた。
銀色にきらめく夜の波が寄せては返し、まるで俺たちのこの瞬間を祝福するみたいに、優しく揺れている。
俺のこれまでの荒みきった人生の中で、こんなにも美しい光景はもう二度と訪れない気がした。
……いや、こんな奇跡みたいな瞬間は、これきりでもう二度と来なくていい。
ただひとつだけ。
もし、この世界に本当に”神様”が存在するならば───……。
今この手の中にいる“こいつ”だけは──俺はもう、絶対に失いたくない。
……たとえ、この手の中にあるものが、どれだけ嘘を重ねていたとしても───……。



