終わらない物語を君へ

 バイトが終わるころには、空にはすっかり夜が落ちていた。
 「おつかれさまでした!」
 結衣が元気に手を振って、駅の方へ走っていく。
 気づけば、みどりと蓮だけが残った。

 店の明かりが背中を照らす。
 静かな街の中、二人の足音だけが並んで響いていた。

 「……今日、楽しかったな」
 みどりがぽつりとつぶやくと、蓮は横目でちらりと見た。
 「うん。笑ってるみどり、久しぶりに見た」

 「そんなことないよ」
 照れ隠しのように笑ったけれど、胸の奥が少し温かくなった。

 「結衣さんと一緒にいると、自然に笑えるの」
 「いい友達だね」
 蓮の声は静かで優しい。
 「みどりが、誰かと笑ってるの見るの……好きだよ」

 その言葉に、足が一瞬止まる。
 胸がきゅっと鳴った。

 ――昔の私だったら、こんなふうに人と関わるのが怖かった。
 けど今は、違う。
 この人と、あの子と一緒に過ごす時間が、ちゃんと嬉しい。

 「ねえ、蓮」
 「ん?」
 「ありがとね。一緒に来てくれて」

 「こちらこそ」
 蓮がふっと笑う。
 街灯の下、その横顔が少しだけ柔らかく見えた。