終わらない物語を君へ

 「じゃあ、これにしようか」
 蓮の服を何着か手に取り、会計に向かおうとしたときだった。

 ふと、みどりの視線が店の奥に吸い寄せられる。
 そこに飾られていたのは、淡いベージュのワンピース。
 光を受けてふわりと揺れるその布地が、なんだか遠い記憶をくすぐった。

 ――こんな服、いつから着ていないだろう。

 ほんの少し立ち止まって見つめていたみどりに、蓮が気づいた。

「みどり、それ……気になるの?」

 振り返ると、蓮は優しく微笑んでいた。

「ううん、別に……」
 あわてて視線をそらすみどり。

 けれど、蓮はそっとワンピースを手に取り、光にかざした。
「これ、みどりに似合いそうだよ。着てみたら?」

「えっ、私?」

「うん。なんか、みどりがこれ着て笑ってる姿が浮かんだ」

 真っ直ぐな声。
 その優しい響きに、胸の奥がじんわりと熱くなる。

 ――スカートなんて、もうずっと履いていなかった。
 あの日のトラウマ以来、地味な服ばかりを選んできた。
 鏡の中の自分を見るのも、どこか怖くて。