終わらない物語を君へ

 出来上がった料理をテーブルに運ぶ。

 しばらく一人暮らしをしていたみどりは、料理には自信があった。
 毎日、自分のためだけに作っては、ひとりで食べて――そんな日々が続いていた。

 でも、今、目の前に蓮が座って、箸を手に取り、笑顔で口を運ぶ。

「……おいしい」
 その一言に、みどりの胸はじんわり温かくなる。
 一人で食べていた日々とは違う、誰かに食べてもらえる喜び――それを、今、確かに感じていた。

「よかった……」
 思わず小さく呟くと、蓮はにっこり笑った。

「君が作ったものは、何でもおいしいよ」

 蓮が、楽しそうに頬を緩め、時折小さく笑うたびに、みどりの心は跳ねる。

 目の前の彼の笑顔ひとつで、料理がより特別なものに変わる。

 「……ああ、こんな気持ちになるんだ」

 小さく呟く。

 一人で作る日常も悪くはなかった。
 けれど、誰かのために作る日常――
 しかも、大切な誰かのために。
 それでこんなに胸が温かくなるなんて思わなかった。

 そして、蓮がまた一口食べる。

 みどりは自然と笑顔になり、心の奥が満たされていくのを感じた。

 料理の温かさと、目の前の人の温もり。
 この瞬間こそ、現実の幸せ――
 ページの向こうではなく、今ここにある奇跡だと。