次の日。

 恋が学校に1人で登校すると、宗介は先に教室へ着いていた。

 宗介は恋が教室へ入って来たのを背中に、男子生徒と歓談していた。

 なんで宗介が怒ったのかさっぱり分からなかったが、昨日の事を謝ろうと思っていたので恋が宗介達の会話が途切れるのを待っていると、後ろからぽん、と肩を叩かれた。


「新田さんこっち見て。」


 振り向くと美風が立っていて、にこっと笑顔を作った。



「樋山くん」

「どうして上野なんかを見てるの?。キミには僕が居るでしょ。まったくそういう風にいつも僕を無意識に煽るんだから。約束のチケット、今日財布に持ってきてあるよ。」

「約束?」

「デート。決まってるよ。」



 美風は首を傾げた。



「忘れたなんて言わないよね?。」

「あ、そっか」

「日曜の一時に、公園で待ち合わせ。バス乗って隣町の映画館。アイス食べても良いし、ファーストフード食べても良いし。帰りどっか寄ろうよ。」

「良いね。」

「凄い評判の映画なんだ。楽しみだね。」



 モジモジしている恋に向かって、美風は茶目っ気たっぷりに言った。



「言っておくけど、狐で来ちゃ駄目だからね。」

「分かってるよ。」



 恋は、映画館で狐になって膝に乗って良いか聞いた。

 宗介は2人のやり取りに耳を澄ませていたが、わざと、話が終わるのを待っている恋を無視して男子生徒と話し続けた。