キンコーンとチャイムが鳴って帰りのホームルームが終わる。


「恋、うちへ寄ってかない?」


 鞄を背負った理央が机にやって来て恋に尋ねた。

 恋は時間割を描き終えて今しがたメモ帳をしまった所だった。



「何で?何か用事?」

「この間恋に借りてた図鑑、返そうと思って。学校に持ってくれば良かったんだけど。」

「いつでも良いよ」

「助かる。暇なら遊びに来てよ。私やることないし。」



 斜め後ろの席で宗介が、鞄を持って立ち上がった。



「恋、帰るよ。」

「ちょっと待って。」

「駒井んち寄るなら寄るで良いけど、お前まだこの前の国語の作文書き終えてないだろ。ちゃんと終わらせなよ。成績付くんだから。端折って先生に怒られても知らないよ。」

「うん、分かってるよ」

「国語の先生厳しいから、恋、先に作文仕上げた方が良いよ。またにする。また今度呼ぶよ。」

「言っとくけど僕に頼んでも書かないからね。まったく。学校の作文なんて、適当に済ませれば良いのに。普通そんな根詰めて書かないんだから。」



 ガラガラと戸を開けて廊下に出る。

 話しながら階段を降りて行くと、パラパラと下校する生徒たちの姿が見えた。