ダイニングで宗介はお湯を沸かすと、小さなコップに緑茶を淹れて、恋に渡した。

 しばらく宗介はソファに座って黙っていたが、気を取り直して、恋に言った。



「お前が居ないと部屋が寂しくなる。せっかくのクリスマスに喧嘩なんてちょっと馬鹿げてたね。」

「ごめんね、宗介」

「別に。気にしてない。」



 宗介はテーブルの上のネックレスをつまみ上げた。



「どこで買ったの」

「駅前。」



 宗介の思考が、組み立てられて一点で止まった。



「まさかとは思うけど、お前、樋山と行ったの?」

「え、うん。駄目だった?」



 きょとんとした顔の恋に、宗介は表情をなくしていたが、やがて作り笑いをした。



「ちょっと。」

「何?」

「ちょっとこっち来て。」



 テーブルの隣で近付いて来た恋の頬を、宗介はパッチンと音を立てて打った。



「痛……」

「仕置き。ほんっと何も分かってないんだから!。」



 宗介は声を荒げると言った。



「お前は僕の彼女で、僕以外と遊んじゃおかしいの。恋人のルール。そんな事も分かんないのかよ。」

「だって、来ないって言ったから……」

「言ったら何?。何で止めないんだよ。それもクリスマスに!。」



 しばらく宗介はガミガミと恋を叱っていた。

 しょげた恋がお茶のコップを取ると、宗介は習慣で叱りながらコップに片手でお茶を注いだ。

 しばらく宗介は小言を言っていたが、ふいにテーブルのネックレス取ると、酔狂に恋の首に手回してネックレスを付けた。


「お前は狐だから、さしずめそれは首輪だね。ああ、僕が狐じゃなくて良かった。」


 宗介は嫌味を言いながら、ネックレスを付けて、それで恋が僕のものだったら良いのに、と切に考えた。

 恋はぽけっとした顔で、ごめんなさいを繰り返していた。