「可愛かったな……」 「え……?」 「いや、えっと。なんか昔、そんな猫がいたような……」 「そっか。そっか。……忘れちゃってるもん、仕方ないよ」 「どうしたの?藤咲さん」 「ううん。何でもないよ。ていうか、凪って呼んでよ~」 「凪、ちゃん」 そう呼ぶとうんうんとうなずいてくれた。そしてぽつりと言った。 「早く思い出してよ、はるちゃん。」 聞こえないふりをした。いや、空耳であってほしかった。 その切ない笑みが、記憶の霧の向こうにいるあの彼女と重なって見えた。