見えない君は大切な人



何も書かれていないその場所に、たしかにかつての私がいた気がした。


私はゆっくりと顔を上げ、あの白い家を見つめた。


風が、玄関前の風鈴を小さく揺らしていた。


なにか、分かるかもしれない。


でも、知ってしまったら私が私じゃなくなる気がした。


「……ここは、知らないところ。」


ポケットの中に紙をしまい、学校へ足を進めた。



「あ、はる――佐伯さん!おはよう。」


不意に後ろから声をかけられ足を止めた。


藤咲凪さんだ。


転校してきてからずっと仲良くしてくれる。


彼女とはよく気が合う。


最近、ふとした瞬間に見せる彼女の笑顔が何故か懐かしく思うことがある気がする。きっと気のせいでだ。彼女には初めて会ったのだ
から。