特別な景色じゃないはずなのに、一歩ごとに記憶が揺れる。
──そのときだった。
一軒の家の前で、私は思わず立ち止まった。
白い塀。赤いポスト。小さな木の玄関。
……ここ、
初めて見るはずの場所なのに、涙が出そうになった。
それは懐かしさとは少し違った。
まるで取りこぼしてしまった何かが、ここにあったような、そんな痛み。
そのとき、制服のポケットで指先が紙に触れた。せかされるように手を動かす。
昨日、机の中にもう一度届いていた手紙。
折りたたまれた便箋を広げると、そこにはただ一行だけ書かれていた。
『きみの帰りを、この場所でずっと待ってた』

