記憶の奥に沈んだまま、開かれるのを拒んでいる何か。 それが、私の手の届くところまで浮かび上がってきている。 *** 次の日の朝。 いつもの通学路に出た私は、ふと足を止めた。 時間にはまだ余裕があった。 なんとなく、遠回りをしたくなって、別の道を選んだ。 坂の多いこの街。 少し上るだけで、景色はがらりと変わる。 知らないはずの通りなのに、どこか知っている気がする。 この感覚、また…… 歩きながら、胸の中がざわついた。 ひび割れたアスファルトの道、ブロック塀に咲いた花。