「……やっぱり忘れてるんだ。私のことも。」
考え込んでいた私にその声はとどいていなかった。
ちゃんと目を見て話す人。
——私には、その“目”すら見えていないのに。
胸がじくじくと痛んだ。
彼は、本当にここにいるんだ。
周りの人とちゃんと関係を築いてる。
私だけが、彼を認識できていない。
ただそれだけの事実が、どうしようもなく孤独に感じられた。
放課後の教室に、人の気配はもうなかった。
西日が差し込む窓辺で、静かに机と椅子の影が伸びている。
私は、自分の席に座ったまま、隣を見ていた。
彼の席。
白石蒼真の席。

