見えない君は大切な人




「これ……誰が……?」


声に出したとたん、空気がひやりと変わったような気がした。


風は吹いていないのに、肩口に何かがふれた気がして、私は思わず振り返る。


……誰もいなかった。


でも、気配はあった。


そして、私はその名前を初めて、口の中で転がすように呼んでみた。


「……白石蒼真、くん……?」


名前を呼んだ瞬間、なぜか心臓が一回、深く跳ねた。


理由はわからない。けれど、それは確かに“彼”のことだったのだと、そう思った。



翌日の朝も、教室には変わらない日常が流れていた。


席に着くと、前の席の男子が笑いながら振り返って言った。


「おい白石、おまえまた寝癖ついてんぞ」


私は一瞬、自分が呼ばれたのかと思った。