見えない君は大切な人




戸惑いながら拾い上げ、周囲を見回す。


誰もいない。


夕焼け色の光だけが、静かに床を染めていた。


私は手紙を開いた。


そこには、たった一行だけ、こう書かれていた。



『きみには見えないだけだよ』



一瞬、言葉の意味が理解できなかった。


誰が書いたのか。何のことなのか。そもそも、これは私に宛てられたものなのか。


けれど、文字は整っていて、癖のある筆跡だった。


不思議と、男の子の字のような気がした。そして懐かしいような。


心のどこかが反応していた。


“きみには見えないだけだよ”


たったそれだけの言葉なのに、胸の奥がざわざわと波立つ。


まるでその一行だけで、今日一日の違和感すべてを見透かされているような。