私は教室に少しだけ残っていた。
誰かに話しかける理由もないし、話しかけられるような雰囲気でもなかった。
それでも、特別寂しいとは思わなかった。
それどころか、この“余白”のような時間が、今の私には必要だった。
机の中に手を入れ、筆箱をしまってからふと横を見る。
隣の席——白石くんの机の上には、きちんと教科書がそろえられていた。
朝よりも整理されている気がした。
「……片づけた?」
小さく呟いた言葉は、誰にも聞かれなかった。
私は立ち上がり、カバンを肩にかける。
足音を立てないように教室を出ると、廊下には夕方の光が差し込んでいた。

