見えない君は大切な人



私の頭の中で、そんな言葉がぐるぐると回っていた。


周囲の生徒たちは、何の不思議も感じていないようだった。


当たり前のように、その空席を誰かの席として認識し、日常の一部として接している。


それがどれだけ異常なことかに、誰も気づいていない。


逆に言えば——気づいていないのは、私の方なのかもしれない。



私は机の縁を指先でそっと撫でる。冷たい。確かに“何もない”はずなのに。


そのとき、隣の机の上のシャーペンが、かすかに動いた気がした。


風も、誰の手もなかった。


……ただ、少しだけ、転がったように見えた。


私は思わず椅子を引いた。


後ろの席の女子が、驚いたようにこちらを見る。


「あ、ごめん……」


私は小さく謝って、無理に笑った。


女子はにこっと笑い返してくれたが、次の瞬間、その子の視線が私の“隣”を向いたのを、私は見逃さなかった。


まるで、誰かに会釈するように。