
「‥‥‥‥」
私は、森の地面に倒れていた。
怪我は‥‥していない。
腕を見ていたけど、何かが違う。
「これは‥‥」
肌が雪のように白くなっていた。
近くに小川があったので、そこに顔を写してみた。
「‥‥‥‥え」
そこにいるのは、そばかすの少女ではなかった。
長い黒髪、透き通るような白い肌、見る者を吸い込むような金の瞳。
触れれば壊れてしまいそうなほど美しくて――なのに、私はその瞳に、自分の怒りと憎しみを確かに見た。
「これが……私?」
思わずそう呟いた声も、どこか他人のもののように響いていた。
自分ではない別の人の姿に変わってる。
それは知る限り一人しかいない。
「‥‥傾国の魔女‥‥フィロメア‥‥」
望む全ての人の愛を奪う事が出来るという魔法使い。
実際にその姿を見て、それが真実だという事に疑う余地はない。
白い光を放っていた指輪は、段々とその輝きが薄れていく、最後にはただの銀色の指輪になった。
「‥‥‥‥私は‥‥」
私でない他人の姿になってしまった。
しかもそれは傾国の魔女、フィロメア。
そう言えば、フィロメアも裏切られて処刑されたのだった。
私が彼女になったのは、ある意味、当然なのかもしれない。
私も彼女も裏切られて、全てを無くしたのだから‥‥。
彼女は何をしたかった? 私は何を?
考えようとしたけど、考えるまでもない事に気が付いた。
答えは‥‥一つしかない。
――復讐。
私を裏切り、大切な人を奪った者たちへ。
もちろん、それで彼が戻ってくるわけじゃないけど、それ以外に何も考えられない。
何も求めない。
その為にフィロメアは力を貸してくれたんだろう。
選ばれし者‥‥まさにその通り。
「‥‥‥ふふ‥」
気が付けば、私は笑っていた。



