私を追放したグランゼリア帝国の西にあるのが、このヴェルゼスト王国。

 帝国は大国で、この王国には帝国に対抗する程の力はない。

 間にある大森林が緩衝地帯になっていて、帝国はヴェルゼストの内情を良く知らない‥‥はず。

 それなのに、情報が頭の中に詰まっている。

 これはフィロメアの知識を使えるという事かもしれない。

 好都合だ。

 「‥‥‥‥」

 ユリウスを魔法で操り、ヴェルゼストの兵で帝国に攻めれば良い‥‥と、いうわけにはいかない。

 ヴェルゼストの国力では帝国には対抗できない。

 ならばどうする?

 どうすれば、帝国を失墜させ、あのディラン王子とエヴァリン王女を貶める事が出来る?

 諦めるという選択肢はないし、その必要もない。

 今の私は傾国の魔女、フィロメア。

 国を傾ける力を持つ‥‥その力と知識を使えるのだから、必ず、アレクシスの無念を晴らす事が出来る。

 「‥‥ふふ」

 国という単位で考えれば難しい事かもしれないが、その国を運営しているのは人間にすぎない。なら、いくらでも方法がある。


 フィロメアの知識がそう語りかけてくる。