見上げた星空に、奇跡が降る

    ―オリオンー

 冬の大三角を見つけてからも、彼女とは小さなやり取りが続いていた。

 窓から見える景色のこと、空の明るさ、街灯の位置――些細なことだけれど、それが心地よかった。

 そんなとき、画面に新しいメッセージが届いた。


 =……実は、学校には行っていません。ずっと家にいます=


 「…………」

 読み終えた瞬間、息が止まった。

 文字の奥にある緊張が、こちらまで伝わってくる気がした。

 今までのやり取りの中で、彼女が初めて自分のことを語ってくれた――そう思うと、嬉しくもあったが、

 同時に、どう返すべきか迷った。

 「学校に行くべきだ」と言えば、きっと彼女はもう心を閉ざす。

 かといって、何も言わずに受け流すのも違う気がした。

 僕は彼女の暮らしを知らない。

 でも、自分が病室から空を見上げてきた時間を思えば、「こうすべき」と外から決めつけられることの重さは、良く分かる。

 だから、キーボードにゆっくりと指を置いた。


 =行かなきゃいけない、なんて僕は思わないです。でも……もし外に出たいと思ったとき、

 その気持ちは大事にしてほしいなと思います=


 送信してから、少しだけ深呼吸をする。

 これが正しい答えかは分からない。

 けれど、彼女が自分で動きたくなる瞬間を応援する言葉だけは、間違っていないはずだ。

 数十秒後、短い返事が届く。


 =……ありがとうございます=


 画面のその一行を見て、ほんのわずか、彼女が笑っている姿を想像した。