見上げた星空に、奇跡が降る

    ―オリオンー

 約束の日の夜。

 僕は観測の準備をしながら、時計の針を何度も見た。

 少し早く三脚を立て、望遠鏡の角度を冬の大三角に合わせる。

 これから見る星の位置を確認しておきたかったし……正直なところ、待ちきれなかった。

 約束の時刻、パソコンの通知音が鳴る。


 =準備できました=

 =僕もです。じゃあ、まず一番明るい星を探しましょう。南の空の低いところにあります=


 送信して、望遠鏡から視線を外し、窓の外を見やる。

 この星を、彼女も今、探しているだろうか。


 =……見つけました。すごく明るいです=


 その文字を見た瞬間、まるで隣で声を聞いたような気がした。

 距離は遠くても、同じ星を見ている。

 それだけで、ここまで近く感じられるなんて。


 =それがシリウスです。じゃあ、そこから左上に目を動かして……少し赤みがかった星、見えますか?=

 =あ……ありました。ちょっとオレンジっぽいです=

 =それがベテルギウスです。最後は、シリウスとベテルギウスの間を横切るようにして…… 白っぽい星がプロキオン=

 =……三つ、線でつながりました=


 短い文章なのに、弾むような雰囲気が伝わってくる。

 僕も望遠鏡を覗きながら、頭の中でその三角形を思い描く。

 今、その形が彼女の目にも同じように浮かんでいると思うと、不思議な一体感があった。


 =これが冬の大三角です。……きれいですよね=

 =はい。なんだか、見つけられたことがすごく嬉しいです=


 彼女のその言葉に、僕は静かに笑った。