見上げた星空に、奇跡が降る

    ―迷い猫―

 今夜は、空が驚くほど澄んでいた。

 窓を開けると、冷たい空気が頬をなでて、遠くの星がくっきりと見えた。

 こういう夜は、どの星を見たらいいんだろう…………ふとそんなことを思い、キーボードを叩いた。


 =今夜は、空が本当にきれいでした。こういう夜って、何を見るのがおすすめですか?=

 すぐに返事が届く。


 =今の時期なら、冬の大三角ですね。シリウスとプロキオン、それからベテルギウス。この三つの星を線でつなぐと、

 大きな三角形が見えます=


 星の名前を聞いても、私にはまだ区別がつかない。

 思わず笑いながら返す。


 =名前を聞いても、どれがどれかわからないです(笑)=


 次に届いた彼のメッセージを見て、指が止まった。


 =じゃあ、今度同じ時間に空を見ましょうか。僕が順番に教えます=


 ……一緒に見る?

 顔を合わせるわけじゃない。でも、同じ時間に同じ空を見上げる。

 それだけのことなのに、胸の奥が急に熱くなる。

 ほんの数週間前まで、私は空を見ることさえしていなかった。

 それなのに、今は「一緒に見る」という言葉に、迷いより先に嬉しさがこみ上げてきた。

 少し間をおいて、短く返す。


 =……いいですね、それ=


 送信したあと、胸の奥にぽっと新しい星の灯りがともったような感覚があった。


 同じ時間、同じ空を見ている……そう思えるだけで、距離が近づく気がした。