―オリオンー 

 返事を返すと、すぐにまた通知が光った。

 =今日は風も弱くて、外に出ても寒くなかったです=

 その何気ない一文が、やけに嬉しかった。

 星や天体の話じゃないけど、彼女の方から話してきて、それに答える分には構わないだろう。


 =そうなんですね。こっちは少し風があります。望遠鏡が揺れないように押さえながら見てました=


 送信して、ほんの数秒後。


 =そうやって観測してるんですね。なんだか想像すると面白いです=

 =面白いですか? 見てる方は必死ですけど(笑)=


 短いやり取りの中にも、以前の柔らかさが少しずつ戻ってくるのを感じる。

 ……余計なことは言わない。

 彼女が話したくなるまで、僕はただ耳を傾ければいい。


 =望遠鏡って、重いんですか?=

 =僕のはそこまでじゃないです。でも三脚は安定させないと結構揺れます=


 彼女が興味を持って質問してくれることが、こんなに嬉しいとは思わなかった。

 前のように、星や観測のことをもっと話したくなる衝動を、少し抑えながら、丁寧に言葉を選んで返す。

 やり取りを終えて望遠鏡を覗くと、空は少し霞んでいた。

 それでも、星はそこにあった。


 まるで、数日離れてもまた戻ってきてくれた彼女のように――。