「まみちゃん。いつもありがとね」
「こちらこそ、ありがとう」
にっこりと笑いながら、彼はサイン入りのCDを手渡す。
私の推し――アイドルグループ《killer smile》のエース、しゅうとくん。
今日もまた、私は特典会に足を運んでいた。
「ねぇ聞いて!この前ね、しゅうとくんに“付き合ってって言ったらいいよ”って言われたんだよ!」
「えーー!?まぢで!?」
「やっぱりしゅうとくんって、ファン思いでキラキラしてるよね~」
隣で盛り上がるヲタ友たち。
……でも、私は少しだけ落ち込む。
「え?さやかにはそんな感じじゃないの?」と友達が不思議そうに首をかしげる。
「うーん……私、いつも意地悪されるんだよね」
頭に浮かぶのは、あの日の出来事。
――「ね!しゅうとくん、指ハートして!」
――「……やだ」
――「えぇ?いいじゃん!」
――耳元で小声で囁かれる。「……うるせぇよ」
あの時の冷たい声が、いまだに胸に残っている。
「だから、私きっと嫌われてるんだと思う。しつこいヲタクだから」
「いやいや!そんなことないって!昔から応援してるから、逆に身近に感じるんじゃない?」
友達はそうフォローしてくれる。
でも――私には、誰にも言っていない秘密がある。
***
「おはよう」
朝、教室の入り口で立ち止まっていると、後ろから声をかけられた。
振り返れば、高身長の男子。
「さやか、おはよう」
……そう、彼はクラスメイト。
そして私の推し――しゅうとくん。
初めて見たのは入学式の日。まさか同じ学校、しかも同じクラスだなんて思わなかった。
だから私はずっと隠している。
特典会に行くときは偽名を使い、変装をして。
彼だって、気づいていないはず。
「なぁ、さやか。宿題やった?」
「え?やったけど……しゅうとくんは?」
「いや、俺やってない」
「またぁ?」
彼は私の耳元に顔を寄せる。
「……見せてよ」
ドキッとして、顔が一気に熱くなる。
「か、顔あかっ!」と笑うしゅうとに、私は思わず抗議した。
「しゅうとくんが耳元で囁くからでしょ!」
本当は、クラスでは普通の距離感でいたかった。
でも、彼に宿題を見せてあげたことをきっかけに、気に入られてしまって。
気づけば、彼と話す機会が増えていた。
心の中ではビクビクしている。
――いつか、私の正体がバレてしまうんじゃないかって。
ヲタ活は大好き。絶対にやめられない。
だからこそ、この秘密は誰にも知られてはいけない。
「自分で宿題できるようになってよ?」
「やだよ。俺忙しいんだもん」
「お願いだから自分でやって!」
「さやか!日直お願い!」
「はーい!今行く!」
黒板に向かって歩き出す私。
「……そうなったら、話せなくなるだろ」
彼がそんなことをつぶやいていたとは知らずに。
「こちらこそ、ありがとう」
にっこりと笑いながら、彼はサイン入りのCDを手渡す。
私の推し――アイドルグループ《killer smile》のエース、しゅうとくん。
今日もまた、私は特典会に足を運んでいた。
「ねぇ聞いて!この前ね、しゅうとくんに“付き合ってって言ったらいいよ”って言われたんだよ!」
「えーー!?まぢで!?」
「やっぱりしゅうとくんって、ファン思いでキラキラしてるよね~」
隣で盛り上がるヲタ友たち。
……でも、私は少しだけ落ち込む。
「え?さやかにはそんな感じじゃないの?」と友達が不思議そうに首をかしげる。
「うーん……私、いつも意地悪されるんだよね」
頭に浮かぶのは、あの日の出来事。
――「ね!しゅうとくん、指ハートして!」
――「……やだ」
――「えぇ?いいじゃん!」
――耳元で小声で囁かれる。「……うるせぇよ」
あの時の冷たい声が、いまだに胸に残っている。
「だから、私きっと嫌われてるんだと思う。しつこいヲタクだから」
「いやいや!そんなことないって!昔から応援してるから、逆に身近に感じるんじゃない?」
友達はそうフォローしてくれる。
でも――私には、誰にも言っていない秘密がある。
***
「おはよう」
朝、教室の入り口で立ち止まっていると、後ろから声をかけられた。
振り返れば、高身長の男子。
「さやか、おはよう」
……そう、彼はクラスメイト。
そして私の推し――しゅうとくん。
初めて見たのは入学式の日。まさか同じ学校、しかも同じクラスだなんて思わなかった。
だから私はずっと隠している。
特典会に行くときは偽名を使い、変装をして。
彼だって、気づいていないはず。
「なぁ、さやか。宿題やった?」
「え?やったけど……しゅうとくんは?」
「いや、俺やってない」
「またぁ?」
彼は私の耳元に顔を寄せる。
「……見せてよ」
ドキッとして、顔が一気に熱くなる。
「か、顔あかっ!」と笑うしゅうとに、私は思わず抗議した。
「しゅうとくんが耳元で囁くからでしょ!」
本当は、クラスでは普通の距離感でいたかった。
でも、彼に宿題を見せてあげたことをきっかけに、気に入られてしまって。
気づけば、彼と話す機会が増えていた。
心の中ではビクビクしている。
――いつか、私の正体がバレてしまうんじゃないかって。
ヲタ活は大好き。絶対にやめられない。
だからこそ、この秘密は誰にも知られてはいけない。
「自分で宿題できるようになってよ?」
「やだよ。俺忙しいんだもん」
「お願いだから自分でやって!」
「さやか!日直お願い!」
「はーい!今行く!」
黒板に向かって歩き出す私。
「……そうなったら、話せなくなるだろ」
彼がそんなことをつぶやいていたとは知らずに。


