「俺、年の離れた妹がいて、まだ小2なんすけど、もう彼氏いるんすよ。『小学校ラブ』ってアニメの影響で、なんかクラス中告白ブームらしんすよね。葵も、あ、ウチの妹、葵っていうんですけど、『最近彼氏が構ってくれない』とか、『もううちら終わりかも』とか深刻な顔して言ったりして、マジでマセてるんすよ」と、苦笑する。

「あら、可愛いじゃない」と、サクライさんがにっこり微笑む。
(たぶん、サクライさんが想像している妹は、葵じゃない何かだな)

 確かに、オブラートに包んだ言い方をすると、微笑ましい妹って感じだ。けど、実際はもっとこう……イラっとする。

 ほぼ毎日のように「ねえねえ、お兄ちゃんってまだ彼女いないのぉ?」とか「お兄ちゃんってイケメンだけど、小ラブ(小学校ラブ)の翔ちゃんみたいだよねー。優しいだけじゃ女子ってなびかないんだよ。もっとワイルドなとこ見せなきゃ」とか「お兄ちゃんたち匂わせラブ世代って、全体的に優柔不断なとこあるよねー。葵はやっぱ、直接コクってくれた方がときめくな。葵の今の彼氏もね、最初は眼中になかったんだけどー」とか、勝手に俺の部屋に入り込んできては、いちごみるく片手につらつらと恋愛話を始めるのだ。
 マジでPTA、小ラブ禁止にしてくれ。

 ともあれ、そんな恋愛話大好きな妹のおもりと付き添いで、祖父母の家に遊びに行ったときのこと。
 その日、ばあちゃんは、美容室に出かけていて不在だった。それが葵を刺激した。

「ねえねえ、じいじはどうしてばあばを好きになったのー? 決め手は何~?」

 口と手をびしゃびしゃにしてスイカにかぶりつきながら、葵がいきなり言い出したので、思わず口からスイカを吹き出しそうになった。

「こら、葵。じいちゃんが困るだろ」
「え~、いいじゃーん。ねぇじいじ~。なんでばあばを好きになったの~? ばあばが可愛かったから~?」