「あー、お前さては13時半と11時半を間違えたな」
肝心のところが抜けてんだよな~、とコートに目を向ける。
男女混合の雑多なコート上で、直太がすぐに和田晴美を見つけたのは、愛のなせる業、ではなく、単に和田がボールを持っていたからだろう。
黒のユニフォームを着た和田は、足をもつれさせながら必死にドリブルしていた。
負けている側だった。
顔が険しい。肩が上下して走る速度も遅い。遠目でもめちゃくちゃ疲れてるのがわかった。
その時、和田の背後に走り寄って来た相手チームの選手が、ヒョイと、いともたやすくボールを奪い取り、そのまま凄まじいスピードでドリブルしながら反対のコートのゴールまで走り抜け……ふわっと飛んだ。
軽やかに。
羽が生えているみたいだった。
ピッと、相手側に得点が入り、ゴールを決めた女子は仲間たちと笑顔でハイタッチ。元気っぽい女子だな。
オレンジの4番のユニフォーム。
汗だくの笑顔が弾けている。
そのあともオレンジの4番の活躍は続いた。
バスケのルールをほとんど知らない俺でも、ボールさばきとか、シュートとか、ポジション取りとかが、ずば抜けてうまいとわかった。
しかも、他の選手の2倍は動いている。半端ない持久力。
運動神経もいいけど、自主練で朝晩走り込みとかしてる努力家タイプかも。
気が付けば、オレンジの4番を目で追いかけていた。コート上で人を惹きつける吸引力があった。
ビーーーっと終了のブザーが鳴って、わぁ~っと、オレンジの4番にチームメイトが集まり、もみくちゃに抱き潰されている。
(慕われてるんだなー。キャプテン?)
もみくちゃにされながら、くったくない笑顔でチームメイトたちとハイタッチするオレンジの4番。
汗だくのユニフォーム、びっしょり顔に張り付いた黒髪。
93対32の圧勝でオレンジチームの勝ち。
俺が試合を見始めてからの得点は、ほぼオレンジの4番の手柄だ。
ああいうヤツが、高校の特別部活優待生になるんだろうなと思った。
「あ~あ、晴美ちゃん頑張ったのに大差で負けちったなー。でもしゃーねーよな、相手が悪かったよな。晴美ちゃんはよく頑張ったよな。なあ、秋人……慰めに行くべきか、それとも見なかったことにするべきか、どっちだと思う? なあ、聞いてる?」
「ん? あー、そっとしといた方がいんじゃね」
テキトウに言いながら、オレンジの4番の名前、なんていうんだろう、どこ小かな、とか考えていた。
思えば、女子の名前を知りたいと思ったのは、人生初のことだった。
肝心のところが抜けてんだよな~、とコートに目を向ける。
男女混合の雑多なコート上で、直太がすぐに和田晴美を見つけたのは、愛のなせる業、ではなく、単に和田がボールを持っていたからだろう。
黒のユニフォームを着た和田は、足をもつれさせながら必死にドリブルしていた。
負けている側だった。
顔が険しい。肩が上下して走る速度も遅い。遠目でもめちゃくちゃ疲れてるのがわかった。
その時、和田の背後に走り寄って来た相手チームの選手が、ヒョイと、いともたやすくボールを奪い取り、そのまま凄まじいスピードでドリブルしながら反対のコートのゴールまで走り抜け……ふわっと飛んだ。
軽やかに。
羽が生えているみたいだった。
ピッと、相手側に得点が入り、ゴールを決めた女子は仲間たちと笑顔でハイタッチ。元気っぽい女子だな。
オレンジの4番のユニフォーム。
汗だくの笑顔が弾けている。
そのあともオレンジの4番の活躍は続いた。
バスケのルールをほとんど知らない俺でも、ボールさばきとか、シュートとか、ポジション取りとかが、ずば抜けてうまいとわかった。
しかも、他の選手の2倍は動いている。半端ない持久力。
運動神経もいいけど、自主練で朝晩走り込みとかしてる努力家タイプかも。
気が付けば、オレンジの4番を目で追いかけていた。コート上で人を惹きつける吸引力があった。
ビーーーっと終了のブザーが鳴って、わぁ~っと、オレンジの4番にチームメイトが集まり、もみくちゃに抱き潰されている。
(慕われてるんだなー。キャプテン?)
もみくちゃにされながら、くったくない笑顔でチームメイトたちとハイタッチするオレンジの4番。
汗だくのユニフォーム、びっしょり顔に張り付いた黒髪。
93対32の圧勝でオレンジチームの勝ち。
俺が試合を見始めてからの得点は、ほぼオレンジの4番の手柄だ。
ああいうヤツが、高校の特別部活優待生になるんだろうなと思った。
「あ~あ、晴美ちゃん頑張ったのに大差で負けちったなー。でもしゃーねーよな、相手が悪かったよな。晴美ちゃんはよく頑張ったよな。なあ、秋人……慰めに行くべきか、それとも見なかったことにするべきか、どっちだと思う? なあ、聞いてる?」
「ん? あー、そっとしといた方がいんじゃね」
テキトウに言いながら、オレンジの4番の名前、なんていうんだろう、どこ小かな、とか考えていた。
思えば、女子の名前を知りたいと思ったのは、人生初のことだった。



