野球部君を密かに思い続けたまま季節はめぐり、三学期を迎えた席替えで、カナエは、とある女子と席が近くなった。

「バレー部で、背が高くてショートカットの子でね、自分はサバサバしてるから女子より男子の方が気が合うんだって、公言していたわ」
「それ、一番サバサバしてないタイプの女子ですねぇ」

 いるいるぅと、顔をしかめた私をおかしそうに眺め「サバ子ちゃんにするわね」と桜井さんがあだ名をつけた。
 
 ある日の放課後、突然サバ子ちゃんがカナエに話しかけてきた。
「カナエってコウタと仲いいよね。好きなの?」
「え? ないない」
「ほんと? 良かったー。実はあたし、アイツのことが好きなんだよね。仲良くなるの協力してくんない?」

「……そんな風に頼まれちゃって」と桜井さんが、頬に手を当てて眉を下げた。
「いますよねー、そーゆーちゃっかり女子」

「わかる? 泉ちゃんの周りにもいる?」
「めっちゃいますよ」
 橘がらみで。
 もはやブルドッグよりしかめっ面の私に、桜井さんが「泉ちゃん、顔」とふき出した。

「でもそんな風に言われたら、私も断れなくてね」
「ですよねー」
 サバ子ちゃんめ。やりおる。