「あっれー、隣にいるの、いずねェさんだよねー! いずねェさーん」
 今日も綺麗で可愛い河合ちゃんが私に気づいた。
 髪をサラリとなびかせ、可憐に白い手を振っている。

「お、マジだ。おーい、あのお悩み相談系のいずねェさんっすよねー」
 それに乗っかる男子たち。
 しゃーない。
「やっほほーい! どんなお悩みもさくっと解決っ! みんな大好きいずねェさんだよぉ。さあて今日のお悩みはこちら♪」
 ちゃきっと、右目の上でピースを作ってポーズ!

「あはは~、いずねェさんかわい~」と可愛い河合ちゃん&ふわふわ子犬ちゃんが可愛く笑う。
「似てねーぞ~」と男子たち。
「おい、コラそこ、リクエストしといて突き放すな!!」
 ケラケラとみんな笑っている。
 よし、つかみはOK、って、私はお笑い芸人か。

 最近の私は、お悩み相談系AIユーチューバーの『いずねェさん』としていじられていた。ちなみに似ているのは、名前だけである。

「相変わらずポメは人気もんだなー」と橘が無邪気に感心している。
「ふっふっふ」
 不敵に笑いながら、ただしモテないけどな、と心の中で付け加える。

「てか、イケメン橘友達またせてんぞ」
「あ、そうだった。じゃ、ポメ、またなー」
「ポメいうなー」
 軽く手を振ったイケメンが、颯爽とリア充系ステキ男女たちに向かって走り出す。
 いいなぁ、あっちは華があって。
 
 ふと気が付けば、知らず知らず自分の髪を触っていた。

「うえ」
 ぬるりとした湿気に激しく膨張し、もっこもっこの入道雲並みにもこり中。

「ポメかぁ~」
 いずねェさんと同じくらい、私とは似ていない。
 ポメはもっとこう……かわいいよなぁ。