翌日は、今年最初の記録的酷暑日で、放課後は地獄の業火も真っ青な猛烈な暑さとなった。
 体感温度は45℃を軽く超えている。校舎の灼熱アスファルトは、でろんと溶けて湯気と一緒にゆらゆらしている。

 焼ける暑さに、セミも沈黙。
 橘いわく、サウナのロウリュウに似た焼け蒸し暑い校舎を抜けて、私は汗だくで自転車置き場にそそくさ向かっていた。

「ポメ、何急いでんの?」
 背後から声。橘だ。

「なんだ、イケメン橘か」と、そっけなく言い放つ。
「なんだとはなんだ。ポメ」

「あっちぃ」と首元をシャツでパタパタ仰ぐ橘。
 首筋にダラダラ流れる汗まで、何気に爽やかに見える。爽やかに青空を仰ぐ橘。
 ムカつくなー。憎たらしいなー。


「ポメ言うな。いろいろあって私は忙しいのだよ」

「いろいろ? 何それ、何かあんの?」
 わざと含みのある言い方をしたら、思った通り食いついてきた。

「実はですなー」
「おおーい、たっちばなー。今日、文化祭の実行委員だよぉー」
 校舎二階の窓がガラリと開いて、リア充系ステキ男女たちがひょっこり顔をのぞかせた。
 私の髪の毛センサーが、女子たちの髪の毛を瞬時にサーチ。

 1匹目は、見るからにふわふわで子犬ちゃんみたいな小動物系女子。
 うちのクラスではないので、他クラスのカースト上位女子だろう。いいふわふわ加減。

 2匹目はサラサラストレートの同クラカースト1位の河合ちゃん。
「やっべ、今日も可愛い河合ちゃん」と、アホ男子たちがよく韻を踏んでいる。
 でも可愛いより綺麗の方が当てはまる美女だ。

 それと周りを固めるイケメンぽ男子3名。
 ううむ。レベルが高い。と感心していたら。