「うふふ。恥ずかしいけどこれも話しちゃおうかしら。あのね、実はフラれてからしばらくの間、私ね……もうすっごく恥ずかしいんだけど、ほら、中二病って言うの? 密かに悲劇のヒロインみたいな自分に酔いしれていたの。失恋してもひたむきに想い続ける健気な自分、みたいな。私、好きな人のことを友達にオープンに話せるタイプじゃなかったから、その分一人で悦に浸ってたのよね。当時流行ってた失恋ソングのCDをコンポの音量絞って流しながら、夜な夜な布団の中でこっそり泣いたりして。やだ、恥ずかしい。もうこれ、本当に内緒よ」
 
「……めっさわかります」
 わかりみ、エグい。
 カナエちゃんとなら親友になれそうだ。

 実は密かに私も似たようなことを、サブスクの音楽配信聴きながら、することがあったりなかったり、あったり。
 これはマジでマジでトップシークレットだ。
 
 もしも誰かに知られたら、「泉は恋愛対象にならないアホ」という、私のこれまで積み上げてきたイメージが崩壊する。

 補足すると、私はこれまでの人生において、まだ一度も告白というものをしたことがないので、片思いの人を一途に思い続ける健気な自分、的なペルソナで、青春ラブソングを聞いて、こっそり涙するとかしないとか、するとか。

(ぬお~~~)
 体中をかきむしりたくなる。
 猛烈な恥ずかしさが全身をぞわぞわさせている。

「そ、その野球部君が桜井さんの初恋だったんですか?」

 ぞわぞわ聞きながら(あれあれ?)と思った。
 それじゃあ最初のコウタ君は何だったんだ?

「それも、初恋、かしら」
「それも? それってどういう」