現在のわが国において部活動ができる高校生は、各県でスポーツ・文化強化学生に認定されたほんの一握りの人たちのみ。
 彼らは特別部活優待生として、介助実習時間に県の部活動専門施設で部活動をすることが許されている。
 ただしそういった人たちは、幼少期から月謝の高い専門教室に通い、英才教育を受けてきた人たちがほとんどだ。
 コネとかもあったりして、私たちのような一般ピープルとはいろいろ違うっぽい。

「昔の高校生は誰でも部活ができたのにねぇ」
 桜井さんは、私たち高校生のために親身なため息を吐いてくれた。 

 やっぱいい人だなぁ、と感心しつつ「それで、その野球部君とはどうなったんですか?」と、私の興味は恋の行方にビンビン向いている。
 
「それでね」と、桜井さんが口元に乙女チックな笑みを浮かべて話し始める。

 あっけなく初戦敗退した野球部君の夏は終わり、3年生は部活引退となった。
 そうして季節は秋へと巡り、カナエはある日偶然にも野球部君と二人で下校する機会に恵まれたのだった。