ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


 夏祭りは上手くいったらしく、翌日テレビのニュースで紹介されていた。
 夏祭りの儀式成功ってニュースになるんだ……。
 
「お嬢様、本日の予定なのですが……」
「うん、なに? どこかでかける?」
「はい。稲穂(いなほ)さんに、図書館で宿題をしようと誘われておりまして……」
「素敵じゃない。いってらっしゃいな」
 
 私がそう言うと(りん)は嬉しそうに「えへへ」と照れ笑い。
 可愛い。
 うちの(りん)、可愛い。
 この別邸に来る前はいつもどこか怯えたような感じだったけれど、最近はどこからどう見ても普通の可愛い女子高生。
 ……別な意味で心配だわ。
 こんなに可愛くて、変な男に声をかけられたり田舎の不良に目をつけられたりしないかしら?
 まあ、大離神(おおりかみ)家の稲穂(いなほ)さんが一緒にいるのだから大丈夫だと思うけれど……。
 ま、図書館に不良がいるわけないから大丈夫か!
 
「お嬢様はどうなさいますか? 本日」
「今日は動画の編集を行いまーす。昨日撮影した動画を編集して、十夜のお母さんや真智のおじ様がしてくださった解説音声を入れるの。それから一夜さんがくれたライブ2Dも試してみたいし……色々スケジュールを一夜さんと話しあったりしなければいけないわ」
「お忙しいのですね」
「そうね。今日からはちょっと忙しいわね」
 
 多分今日中に終わらないわね。
 でも、もうすぐVtuberデビューできると思うと頬も緩む。
 まあ、改めて投稿する動画が問題ないか確認しなければいけない。
 裏の林の悪霊のように、動画に痕跡を残して自分の悪意を振りまこうとするかもしれないもの。
 動画を通して、波長の合う人のところに“飛んでしまう”かもしれない。
 しっかりと動画をお祓いしておかなければいけないから、めちゃくちゃ集中して確認しないといけないんだよねぇ。
 まあ、やるけれど。
 動画を見た人の安全を確保するのは、動画の内容的に当たり前のこと。
 炎上して逆に自分の首を絞めることになるのは嫌だもの。
 
「お嬢様はすでに宿題を終わらせておられるんですもの、すごいです」
「中学生にもなると宿題の量も多いんじゃない? 私の場合自由研究もあってないようなものだから」
 
 小学校一年生の自由研究はお経を覚えてくること。
 そして夏休み明け、みんなの前で覚えてきたか発表する。
 お経を人前で読むのは仕事をしていく上でむしろ当然のこと。
 なんなら霊の前でも読むので、発表は適性を見る意味でも必要だと思う。
 まあ、私はお経を覚えているし発表も堂々とできる自信があるけれど!
 
「では、お夕飯の買い物をしてから戻りますね。なにかリクエストはありますか?」
「えーと……じゃあ、ハンバーグ! 真ん中にゆで卵が入っているやつ……!」
「はい、わかりました」
 
 作るの絶対に面倒くさそうなのに、(りん)は笑顔で了承してくれる。
 (りん)の作るハンバーグは美味しい。
 そこに半熟のゆで卵が真ん中に詰まっているととろとろで豪華ですっごく満足感がある。
 っていうか、ハンバーグの中にゆで卵ってあんまり美味しいイメージがなかったんだけれど、手作りは別格だったわ。
 私も大きくなったら作れるようになりたいな~。
 
「では、お昼食を作っておきますのでお腹がすいたら食べてくださいね。そうめんですが、今日のお汁はオリーブトマトです」
「わーい!オリーブトマト汁大好き!」
 
 そうめんでも(りん)はお汁を動画サイトで調べてくれるからオシャレで美味しい。
 っていうか、(りん)の料理スキルがどんどん上がっている気がするのよね。
 動画サイトを私が見るようになったせいか、(りん)もよく見るようになりレシピを調べてレパートリーも広がっている。
 なんか結構洋食も広まっているようで、嬉しい。
 パスタとか、ステーキとか、フライドチキンとか!
 それにコンビニの文化も普通に広まっているのよね。
 ……(りん)は可愛いし、私と違ってゲームでの破滅エンドがあるわけではないし、あの子にもいつか自立して生活をしてほしい。
 そして私が食べたいものをもっと作ってほしい。
 ので、顔を隠して(りん)に料理系ワイチューバーになってもらうのもありなのでは?と最近思うようになっている。
 前世って色々な国の食べ物がたくさん入ってきていた。
 例えばお菓子類。
 マカロン、シュークリーム、エクレア、マドレーヌ、クッキーなどの定番焼き菓子がこの世界には、ない。
 おやつとして出されたことがないので、ちょっと不思議だったんだけれど夏祭りの時に(すぐる)から食糧問題の話を聞いて納得した。
 百年、世界とほぼ遮断されているからそのあたりの流入がなかったんだろ。
 あとはパスタソースの種類の少なさ。
 ミートソースとナポリタンしかないと聞いた時は宇宙猫になったよね。
 たらこ、バジル、カルボナーラ、明太子が、ない、だと……?って。
 あと、ピザもない。
 アクアパッツァ、カプレーゼ、チーズフォンデュなどのチーズ類もない。
 ハンバーガーはかろうじて開発されていたが、まさかチーズがないなんて衝撃的すぎて。
 チーズの作り方、覚えているのよね。
 そういう、前世の知識でこの世界の貢献できたらしたっていいと思うのよ。
 もしも反転巫女が反転しなければ、順当にこの国にも入ってきていたものだと思うのだから。
 海外の伝統料理なら、(すぐる)に頼んで取り入れてもらえたってことにすればいいし、実際にそうしればいい。
 その中からこの国に合うものが残ればいいと思う。
 まあ、食糧問題に関してはどのレベルなのかがわからなくて、子どもの私がなにかできできるわけではないけれど……少なくともチーズやヨーグルトは保存食として作られたものだったはず。
 保存食は食糧問題の助けになると思う。