ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


「もっと大きくなって気持ちや状況が変わったら改めて考えてくれたまえ!」
「ぐっ……」

 諦める気がなさそうだなこいつ。

「――しかし……千頭山(せんずやま)家の当主が悪魔に乗っ取られている可能性か。父上や母上は知っているのだろうか」
「おそらくすでに耳には入っていると思いますよ。日和(ひより)さんのお姉様――稲穂(いなほ)様が(りん)さんから聞いていると言っていましたから。千頭山(せんずやま)家の御当主様は最近公の場にまったく姿を見せない。おそらく姿を見られればすぐにバレるからでしょうね」
「そりゃあそうだろう。……ふーん……」

 考え込む日和(ひより)
 陰陽師って悪魔祓いもできるのかな?
 いや、前世の陰陽師はわからないけれど、この世界の陰陽師は結界の外に住む悪魔とも戦うはずだから、多分祓えるんだろうな。
 でも、日和(ひより)にそれをさせるつもりはない。
 日和(ひより)が勝手に祓ってどんな問題が出るかわからないから。

「あの、日和(ひより)さん。祖母のことは我々で勝手に悪魔祓いなどはできないので、まだ手を出さないでくださいね」
「え? なんでダメなの?」
「立場的に……いなくなると色々、混乱が起こるからです」
「そうですよ、日和(ひより)さん。相手は『六芒星』第一位なんですよ。公の場に出なくなって久しくはありますが、『六芒星』第一位の千頭山(せんずやま)家の当主が悪魔憑きになっていた、という事実だけでも問題なのに……」
「あー。オトナの事情ーってやつね」

 面倒くさそうに頭を掻く日和(ひより)
 (すぐる)が捕捉してくれたおかげで日和(ひより)は無茶な強行姿勢を取らなさそう。
 なんか、日和(ひより)、初めて会った時と比べると、本当におとなしくなったなぁ。
 以前の日和(ひより)――いや、ゲームの日和(ひより)ならそんなことお構いなしでそこになにかに憑かれている人がいたら、どんな事情があろうがお祓いを最優先にする。
 それでトラブルが起こっても我関せず。
 そういう問題児っぷりも、日和(ひより)の最強っぷりで黙らせる。
 ヒロインのために少しずつ人間らしい感覚や、周囲に合わせるよう努力を始めて、変わっていく。
 そのサクセスストーリーがエッッッッモいわけなんだが……。

「わかった。父上と母上に聞いてみてから俺がなんとかしてあげよう! だから、千頭山(せんずやま)家のことがなんとかなったら俺との結婚を前向きに考えてくれよな!」
「え、あ、う、あ……え、ええと……まあ、いや……そればっかりは自分の気持ちとかがあるので……」
「それはそうだな! 君に選んでもらえるように頑張ろう!」

 と、胸を叩く。
 あ、明るい……!
 底抜けの明るい空気読めない最強男の片鱗が!
 も、申し訳ないけれど、やっぱり私の推しは真智なんだよなぁー。
 今はそうでもないけれど、いつか真智の声は推しVtuber、織星(おりほし)ハルトくんの声なんだもん。
 言うて織星くんも先輩Vtuberに恋している人なので、そういう意味で“応援”しているわけなんだけれど。
 いや、それはそれとして控えめに言って小3が小1に求婚は色々……法的な意味でもアレでしょ……!

「じゃあ、橋の中心部に向けてもう少し進んでみましょう。浄化を行うので、引き続き見ていてくださいね」
「はい、お嬢!」
「頑張れー、真宵嬢ー」



 橋の中心をレベル5とするのなら、橋のレベル3ぐらいまで浄化が完了した。
 その日の夜に秋月へ報告をしたが、橋の浄化は一旦そこで留めてレベル3部分を重点的に浄化し続けるように、と言い渡される。

「なんで?」
「橋の中心部にいる悪霊は三体だよ? 今の真宵になんとかなる?」
「……ん……う、うーん」

 自信は、確かにない。
 一対一でも数ヶ月かかった。
 私の霊力量ならば一対三でも勝つことはできるだろう、と秋月の見立て。
 でも、私がたとえ前世の記憶があるとしても、霊能力者としての経験が圧倒的に足りていない。
 それを言われると言い返せない。
 色々な心霊スポットや、パワースポットで低級霊や動物霊、土地の記憶の読み取りなどを行い経験を積むべき。

「だから橋の中心部周りをしっかりと浄化し続け、悪霊三体の力を削ぐ。おそらく一番古い悪霊はそう簡単にはいかないだろうが、悪霊になりたての二体はすぐに弱体化するだろう。その二体を先に祓えばいい。二体が古い一体を強化している状態だけれど、中心部周りを浄化して気の流れを清く正しくすれば自然に弱くなるから。その間に君自身の経験値を積むといい。この辺りの心霊スポットは近所の神社かな」
「神社巡り?」
「そうだね」
「なるほど。うん、わかった! 行ってみる!」
「いいですね。色々な神社で夏祭りが行われますから、お友達を誘って行ってみましょう!」

 (りん)が手を叩いて提案してくる。
 夏祭り……夏祭りかあ……。

「夏祭りなんてあるんだ」
「「え、あ」」

 この世界にも、という当たり前のことなのに考えたことのなかったことを呟いたところ、秋月と(りん)に固まられてしまった。
 確かに私、今まで夏祭りみたいな楽しい行事に参加したことがない。
 前世の記憶のある私が宿る前の千頭山(せんずやま)真宵(まよい)がそう、という意味だ。
 多分だけれど、ひな祭りも七五三も祝ってこなかったんじゃないだろうか。
 私自身は中身が中身なので家族の祝いごとに興味はないのだが、私になる前の真宵を知っている二人からしたら複雑極まりないんだろう。
 しかも、せっかくの夏祭りを“修行”にせねばならないのだ。
 “おとな”の立場からしたら……なんかこう、思うところがあるのはわかる。