ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


 という感じで意識改革に近い問答が続く。
 要は『やられる前にやれ』ってことだ。
 真理だと思う。
 こと、結界の外は戦場。
 常に狙ってくる悪霊悪魔に対して殺るか殺られるか。
 そんな場所に将来行くことになるのだから、今から殺意増し増しの殺るのに躊躇する霊能力者であってはいけない。
 結界の中にもそういう悪霊悪魔は掃いて捨てるほど溢れているのだから、ガンガン減らしていこう!
 
「…………でも、霊媒師は霊の気持ちがわかる人がいるんでしょう? そういう人たちにとって悪霊の話を聞かずに除霊するのを戸惑う人とかいない?」
「あっはっはっはっ! 怨霊より上の穢れたモノは話なんか通じないよ! 耳がないからね!」
「み…………」
 
 み、み、み、み、耳、耳が、な、な、な……ないの!?
 
「聞く耳がないのだから話なんか通じないよ。自分の言いたいことしか言わないから、脅してぶっ飛ばす方が早いだろう?」
「た、確かに……」
「僕が悪鬼から座敷童に変わったのは千頭山(せんずやま)家が代々毎日欠かさずに語りかけてくれたからだ。語りかけて、優しく祀ってくれたら話を聞こうと思う。すべての悪霊悪魔をそんなふうに慰めるのは無理だろう? 祀ってもたいしたリターンはないしね。いっそスパッと祓ってあげた方が本人のためだから」
「そ、っか……」
 
 それなら確かに問答無用で処した方が双方のためか。
 なるほど、こうして思想を強めていくのか。
 いいのか、これ。
 これで精神強くなっているんだろうか?
 攻撃性を高めているだけな気がするんだけれど。
 っていうか、祈祷師ってこんなに攻撃性を高める必要あるのか?
 
「そうだ。林の悪霊の除霊だが――もう少しスピードアップしてもよさそうだね」
「え? 本当?」
「ああ。かなり強い悪霊だが、日々真宵が林周辺を浄化していたことで相当弱まっている。悪霊の居場所は中心部に移動しているから、もっとガンガン外堀浄化をするといい。今週中カタをつけられるんじゃないかな」
「い、イケる? イケると思う? 私」
「イケるイケる。悪霊は悪魔ほど悪知恵が回るわけではないから、なにを言われても『うるせえ死ね!』で、オッケーだよ」
「お、っ……ふ……」

 色々な問答を経たあとだとしても『うるせえ死ね!』は火力が高いなぁ!
 でも林の悪霊の課題が今週中に終わらせられる。
 それを聞いたら一気にやる気が出てきた。
 鬼ババア、見てなさいよ。
 私の破滅エンド回避の第一歩だ!
 絶対に私は打ち勝ってみるからな!

「じゃあ、今から林の浄化に行ってくる!」
「一人はダメかな」
「うん、それはそう! じゃあ明日林の悪霊をはっ倒してくる!」
「うんうん、頑張っておいで。……ただ、橋の悪霊は三体に増えている。もう一度同じ入り口を浄化しなさい。浄化に慣れれば真宵の霊力ならすぐ林のような状態になるよ。まあ、道具がよければもっと早く浄化できるんだろうけれど」
「道具は……道具かぁ……」

 お鈴のことを思い出す。
 十夜母に買ってもらえる話だったけれど、結局携帯電話を買って持ってしまったからなぁ。

「もし今度買いに行く機会があったら、錫杖にしなさい」
「錫杖?」
「錫杖は五輪塔を模している。そこに幾つかの輪っかがついているのだが、その輪っかの数でも“格”や“意味”がある」

 四つの輪っかがついているものは四諦(したい)――仏教が説く基本的な教えで『苦諦』『集諦』『滅諦』『道諦』のことを表している。
 六つの輪っかがついているものは六道(りくどう)
 六つの世界――輪廻転生を意味する。
 十二個の輪っかは十二因縁――苦悩を断つための十二の事柄を表す。
 仏様が持っているのは六つの輪っかがついている錫杖が多い。
 錫杖は地面に先を叩きつけるため、地面を通して浄化と結界を張る力がある。
 力が強い者が使えば、相当“武器であり防具”として優秀。
 なるほど……。
 お鈴よりも強い効果があるってことなのね。

「でも、私みたいなチビでも使える?」
「それなんだよねぇ」

 それなんかよぉ……。

「真宵くらい小さな子が使うような錫杖って売ってるのかなぁ? わからないや」
「え、えええ……」
「でもあったら買っておいでよ。真宵が使ったらお鈴よりも高い効果を使えると思うからね」
「う、ううん……。わ、わかった。(すぐる)に聞いてみるね」

 まあ、実際聞く限りだとマジで使えそうなんだもん。
 ちなみに秋月からは「変質者や悪霊や悪魔が襲ってきてもぶん殴れるから。物理的に」と言われた。
 悪霊や悪魔を物理的にぶん殴る?
 変質者はわかるけれど……いや、わかりたくないけれど……物理的に……?
 護身用にもなるって言いたいのかな?

「菊子が変なことを話していたから錫杖がいいと思うんだよ」
「鬼ババアが? なんて言っていたの?」
「生意気な真宵のことは、少しわからせてやった方がいいとかなんとか」
「な、なにそれ。こわい」
「うん、だから――錫杖がいいと思ったんだよ」

 鬼ババアがなにかを仕掛けに来ようとしているってこと?
 鬼ババアとマザコンクソ親父は秋月を“視れる”ほどの霊力がない。
 だからまさか聞かれているなんて思わないんだろうな。

「気をつけるね……」
「うん。もう少し様子を見るつもりだけるど、一人で家を出ないようにね」
「わかった」