ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


 めちゃくちゃ真剣な眼差し。
 これは、冗談ではなく“ガチ”だ。
 そうなんだ……祟り神って祓えないんだ。
 あれはゲームだったから――。

「わかった」
「なんだか怖くなってきたな。君。絶対祟り神に喧嘩を売ってはダメだよ? これをあげるから、もしも祟り神に遭遇したら供物として捧げていいか交渉しなさい。君くらいの年の子ならば、もしかしたらこれで許してくれるかもしれないから」

 と、言って秋月さんがくれたのは飴玉だ。
 ええ〜? 祟り神に遭遇して飴玉一個で許してもらえるの〜?
 まあ、ないよりマシってことだろう。

「明日もあげるから夕飯の後の歯ブラシ前に食べなさい」
「はぁい」


 ◇◆◇◆◇


 それから約三ヶ月、秋月さんに言われた通り私の部屋のある離れから東にある離れの中庭の滝壺で、朝起きたら身を清めるようにした。
 ぶっちゃけ凍える。
 ガチ、冗談抜きで、やばい。
 これ毎日とか頭おかしい。
 でも、実感として自分の身が引き締まって、力が研ぎ澄まされていく。
 なんか、なんだろ。
 感覚の話だから説明が難しいのだが、自分の中に物理的ではない“力”を感じられるようになる。
 自分の力を把握することは、今後どんなふうに力を使うかを自分で配分を考えて決められるということ。
 自分の力をきちんとコントロールできるようになるってこと。
 寒いし、しんどいしどう考えても頭おかしいように感じるけれど。
 でもちゃんと身になっている。
 実感があるからなんかやめるという選択肢がなくなったんだよね。
 こっちは命がかかっているんだもの。
 絶対やり遂げて、あと二年続けたら鬼ババア達より強くなれるって聞いたら……やるっしょ。

「うん、だいぶいいね。力が安定し始めている。これなら結界を張れるようになるだろう」
「結界?」
「そう。まずは自分の身を守ること。周りの人間を守るぐらいの力はもう持っているけれど、まず自分。絶対に、最優先は自分。自分が倒れたら、周りを守ることもできないからね」
「わかった」

 こくり、と頷く。
 そうなんだ。
 自分――が最優先。

「結界張れるようになる?」
「張れるね。簡単なものをまずは覚えようか。一般人でもできる方法。まず息を思い切り吸い込む」
「スーーーっ!」
「お腹に力を入れて、おへその周りを白や金色の“色”で包むイメージをして」
「っ!」
「イメージしたら体の中の悪いものを外に吐き出すイメージで息を吐き出す。フッ! と勢いよくね」
「フッ!」

 勢いよく息を吐き出す。
 不思議なことだが、お腹がめちゃくちゃあったかくなったし、自分の周りに薄い膜のようなものを感じる。
 これが結界……?

「うん。上手に張れているね」
「張れてる? 上手?」
「うん、上手。これが結界。一番簡単なやつね。それでも霊力が強い人間がやると、浄化の効果も自動的に付与されるからどんどん強化されていく。もっと難しくて強力な結界は道具を使ったりするからまだ早いけれど、これは今覚えていても問題はないでしょう」
「ありがとう!」
「学校から帰る時に色々な場所を見て回り、土地の“気”を感じとる修行も同時に行おう。危険と安全の差を感じられるようになると、自分がどんなものなら相手にできるのかが理解できるようになっていくから、自分に見合ったものをまず浄化――そうだね、今の真宵だと土地を少しずつ綺麗にしていくといいだろう。土地を清めればだんだんどこがどう汚くて、どういう理由で汚れていくのかも理解ができていく。まずは人の通りが多いところから浄化をしていくようにしなさい」
「わかった。でも、土地の浄化ってどうやるの?」

 土地の浄化は今のように息を吹きかけて浄化できるのがレベル1。
 祝詞(のりと)を読んで浄化できるのがレベル3以上。
 お香やお清めの塩や酒で浄化できるのがレベル10以上。
 ちょっと間が空きすぎではありませんかね?

「匙加減は経験を積んでいくことで覚えられる。君はまだ成長途中だから、どのくらいの穢れをどのくらいの霊力量で浄化するかまだわからないはずだ。こればかりは経験がものを言う。隠の気のモノは恐ろしいが、戦って勝てないわけではない。恐ろしさをきちんと理解した上で、絶対に負けてなるものかという覚悟も身につけていかなければならない。突然強い敵が現れたら、まずは無視しよう。目を合わせると襲ってくることもある。僕が外に出て、一緒に行ってそのあたりを教えられたらいいのだけれど……」
「秋月さんはお外に出られないの?」
「大人の事情というやつだね」
「そうなんだぁ」

 まあ、あの鬼ババアに囲われているみたいだしな。
 秋月さんはこの離れから出られないのか。
 でも、私の部屋のある離れには来れるみたいなんだよね。
 離れなら移動してオッケーって感じなのかな?
 なんにしても深く聞いていいことはなさそう。

「まあ、君が通っている学校は仏神学校というから、探せばともに成長していける“同志(とも)”にも出会えるかもしれない。探してご覧」
「私が通っているの、仏神学校なの?」
「知らなかった? 専門学校があるんだよ。我々のような職業の者を、比較的安全に育てるのにはそういう学校が必要なんだよ。神仏については学校で学べると思うから、積極的に専攻授業に参加するといい」
「わかった」

 今のところ普通の小学校なのだが、あの学校、神仏学校なんだ?
 友達を作れってことだよね?
 そういえばあの学校なんか変なんだよね。
 休み時間もみんな本を読んで過ごしていて、前世のように和気藹々としていることがないのだ。
 おとなしい子ばかりのクラスなのかなって思っていたけれど……。