ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


 妖怪は基本、罪悪感がなければないだけ体が小さく人間に発見されづらく、贖罪が終わらない。
 この世界が“こう”なってからずっと小さな姿のままの妖怪もいるという。
 妖怪になると知性はないし、基本言語もあいまいで醜く『オレは悪くない』とか『私悪くない』とか『なんで自分がこんな目に!』と叫びながら逃げ回る。
 動く度に全身が軋む痛みを感じるため、泣き喚きながらのたうち回るそうだ。
 死に至るまでも苦痛を受け、死後妖怪に転生しても苦しみ続ける。
 ある意味、この世界では因果応報が確立しており法で裁かれたところで被害者が許さなければ妖怪になる未来は避けられない。
 かと言って、妬み嫉みで人を呪えばその呪いが本人に返ってくる。
 因果応報。
 この世界は、それが明確。
 ある意味、正当で公平で、平和な世界なのかも。
 人が理想に掲げる『みんな手を取り合って戦争のない平和な世界』。
 これほど呪い、呪われなければ世界って平和にならないんだ。
 それにしても……反転巫女は世界の在り方を本当に根幹から変えてしまった。
 そんなことが人間に可能なのか、っていう疑問もあるけれど……。
 
「秋月に精神を鍛える修行も頼んでみる」
「はい。そういたしましょう」
 
 やることが増えなたぁ。
 
 
 
 ◇◆◇◆◇
 
 
 
 気がつくと夏休みについてのしおりが配られる時期になっていた。
 目を丸くして受け取ったしおりを眺め、ページをめくってみる。
 宿題は一冊の冊子。
 い、今どきの小学生は夏休みの宿題ドリルがあるのか。
 そんなことに感心しつつ、仏神学校らしく自由研究ではなく経本を1ページから8ページまで暗記してきて夏休み明けに一人一人読み上げる会が設けられるらしい。
 地獄か?
 私は毎日林の浄化で読み上げているから20ページまでは余裕だなぁ。
 しかし、お経には種類がある。
 霊を退けるもの、霊を成仏させるもの、霊を慰めるもの、土地を浄化するもの、仏の慈悲を与えるもの、悪霊を退けるもの、怨霊を倒すもの、悪魔を消し去るもの、祟り神を鎮めるもの。
 他にも他にも。
 で、今回の課題は通常の『御仏の力を借りて霊や土地も浄化する、慰めるもの』。
 まあ王道のお経。
 多分前世の世界にはないものなのだろうとは思うのだけれど……っていうか、昔見た心霊番組とかで読まれていた者と同じようで違うんじゃないだろうかと思っている。
 私楽勝じゃない?
 
「人前で読むのが嫌だ、という顔をしている人がいますが、皆さんは将来霊能力者として多くの人の前でお経を読まなければなりません。発表会は恥ずかしいと感じるかもしれませんが、今からしっかりと人前でお経を読めるようになりましょう。もちろん、夏休みドリルも忘れてはいけません。夏休みが開けたらみなさんにとっては初めてのテストがあります。頑張ってお勉強しましょうね」
 
 小学生相手なので先生はいつも優しい言い方をする。
 クラスメイト達もかなり嫌そうに渋々「は~~い」と地味に間延びした返事をしていた。
 
「マヨイ、今日このあとなにするの」
「えっと、十夜くんのお母さんにマドレーヌを焼いたから食べにおいでって誘われているからお邪魔する予定」
「ふーん」
「真智は?」
「今日はパソコン教室」
「今日も習い事!? 週に何回習い事に行ってるの!?」
「ん~~~。でも、おばさんと二人きりの時間、なんか、あれだし……家にあんまりいたくないし」
「う、うーん……そういうもの?」
「だってやっぱり血のつながりがあるわけじゃないし……」
 
 和解はしたものの、それはそれとしてやはり“家族”になるには時間が必要なのかな。
 まあ、急になんの遠慮もなく甘えるとか難しいよね。
 私もあのマザコンクソ親父の新しい奥さんに今すぐ甘えろって言われたら無理。
 いや、会ったことないから後妻がどんな人かは知らないけれど。
 もしかしたらいかにもな不倫脳な女かもしれない。
 だとしたらなおさら無理。
 真智のところはおばさんがガチのいい人なのが救いだと思うけれど、逆にそれが居心地割ることもあるんだろうな。
 だって新婚さんだぞ?
 そこに急に放り込まれたら、お邪魔虫的な意味でもちょっと居づらさはある。
 
「気持ちはわかるけれど、それならおばさんやおじさんのお仕事の手伝いもしたらいいんじゃない? おばさんは専業主婦の人なんでしょう?」
「そう。でも手伝いってなにするの」
「それを聞くんだよ。なにか一つでも家のことを任せてもらえるようになったら、真智はその家のその仕事担当になれるんだからかっこよくない?」
「かっこいいのか? それ」
「かっこいいよ。私なんか(りん)に『家事は(りん)の仕事なので取らないでください~』って怒られちゃった」
「それなら主婦の仕事を取っちゃダメなんじゃないのか?」
「主婦と使用人は違うよ。確かに主婦の仕事は家事だけど、それだけじゃないもん。使用人はお金で雇っている人だけれど、主婦は家族のために頑張る人だもん」
 
 真智は首を傾げるが「とりあえず手伝ってみる」と言った。
 うんうん、いいことだ。
 家事ができる男はモテるしね。
 …………まあ、あと…………『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の真智の部屋は立派な汚部屋だったからね……。
 正直『乙女ゲーの攻略対象でこんなマイナスポイント作って大丈夫か?』って心配したほどだもん。
 でも、ゲーム内の真智の境遇を思うと当然なんだよね。
 家族がいないんだもん。
 育つはずの“家庭”を否定して、拒否して、家がなんなかわからないまま育つんだもん。