ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


 テレビを見た結果、やはり私の前世とこの世界はまったく異なる文化成長を遂げていると思う。
 ニュースには今日の妖怪目撃情報が流れ、政治の内容にところどころ結界の外の開放進捗が告げられる。
日本の外――アジア圏にも『六芒星結界』のような結界や浄化を担う家があるらしく、世界の半分の浄化進捗も報道されていて、世界の絶望的状況に口が開いてしまった。
 なによりなんか、アジア圏仲がいいのにもびっくり。
 私の前世の世界って自国の批判を逸らすために、他国に批判先をすり替えるからめちゃくちゃどこもギスギスだったけれど、この世界は世界大戦が起こっていない――その前に巫女が反転したから――なのか、そういうこともない。
 いや、普通に世界の半分を人の住めない国にしている日本、怒られても仕方ないと思うのだが……。
 でもそういう感情で日本を責めると……多分祟られる。
 ああ、そうか。
 多分実際に日本を糾弾した国があったんだろう。
 糾弾した結果が、多分今、コレ。
 反転巫女は理不尽な糾弾の末に反転したのだ。
 他者からの責めに怒り、悲しみ、憎くんだから……もしかしたら、今ほど世界は呪われていなかったのかもしれない。
 でも他人を――日本を恨んだり怒りを向けた結果、それが全部自分たちに返ってきたんじゃないだろうか。
 世界が今よりひどい姿になって初めて『責めてもなにも変わらない』どころか『自分の国もなくなる』と気づいて浄化に向けて動き出したのかも。
 ……でも、なんだかそれって……。
 もやもやする。
 世界の人からしたら、知らないやつのせいで普通の生活ができなくなって国が国として機能しなくなるほどたくさん死んだ。
 そんなの恨んだり怒ったりして当たり前なのに、その感情を向けると自分に倍以上になって返ってきて殺される。
 なんなら自分の周りの人にも被害が及ぶ。
 だから許せない気持ちを押し殺して許し、無理やり前向きになって生きるしかない。
 それって健全なのかな?
 許せない気持ちって、持っていちゃいけないの?
 私は未だに前世の私を殺したやつが許せないんだけれど。
 この世界だと許さないといけないの?
 
「ねえ、(りん)
「はい、どうされましたか?」
「私たちって、なにかひどいことをされても……絶対に許さなきゃいけないの? 恨んだら祟りが増えてしまうから……許すしかないのかな? でもそんなのひどくない? 許したくない時はどうしたらいいの?」
「お嬢様……」
 
 (りん)が私を抱き締める。
 頭を撫でて、「そうですね。許さないことは誰かを、呪うことですからね」と悲しそうな声で教えてくれた。
 許さないこと、イコール呪い。
 呪いの先は祟り。
 
「お嬢様は特に霊力が高いですから、余計にご自身の心には注意を払わなければならないかもしれませんね。でも、こうしてわたしにお気持ちを話してくださってよかったです。心のもやもやは吐き出すと軽くなるんだそうですよ。お嬢様も今のような気持ちになったらすぐに(りん)に話してくださいませね」
「私も誰かを呪ってしまうの? 私も悪魔や祟り神になっちゃう……?」
「そうならないよう、精神も鍛えていかねばならないのです。秋月様に精神の修業も始めたいと乞うてみましょう。一緒におとなになりましょうね」
「……うん」
 
 なんだか、『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の千頭山(せんずやま)真宵(まよい)が祖母に身代わり人形として使われるようになり、体に呪詛を蓄えた――っていうのがわかる気がする。
 許すことができなくてモヤモヤが溜まるのは、人間なら当たり前。
 発散――復讐も恨む続けることも許さないこともできないなら、どこかに移すことができたらそんなに楽なことはない。
 
「でもね、お嬢様。これだけは覚えておいてください。誰かに酷いことをした人間は法律でも裁かれますが、もしも法律で裁かれなければ反転巫女が裁きます。お嬢様が言うように『許せない気持ち』を反転巫女様が吸い上げて、因果応報を与えるのです。罪を犯した者は法で裁かれた方がマシ、と思える目に遭って死んで、成仏もできないまま反転巫女様にも見放され現世をさ迷うことになるのです。弱い、妖怪として。でも、その妖怪も陰陽師の方々の式神に見つかり次第狩られます。罪を犯した者は、贖罪が終わるまで現世で妖怪としてただひたすらに殺され続けるのです。お嬢様も妖怪を見たら殺して食材を手伝って差し上げてください。彼らは生きている人々に殺されることで贖罪を重ねることができる存在だからです。彼らが害した方やそのご家族などが妖怪を“許せる”気持ちになるまで」
「妖怪……さっきニュースでやっていたやつ?」
「はい。妖怪はそのために目撃情報が報道されます。胸のもやもや晴らしたい人が殺せるように」
「一般人も殺せるの?」
「陰陽師の方が書いたお札で一撃です」
 
 えぐい世の中なんだな………………。
 でも、そうやって“殴ってもいい存在”がいるのか。
 いくら罪を犯したからって、何度も殺されるって相当だけれど。
 (りん)はそれでも「まあ、妖怪が反省したところは見たことがないのですけれど」と言う。
 え? 反省しないの?
 思わず顔を上げると、首を横に振る(りん)
 
「反省した妖怪は体が巨大化するんですよ。でも、巨大化した妖怪って見たことがないんです」
「なんででっかくなるの?」
「反省して、早く贖罪を終えるために目立つようになるのだそうです。でも大きな体になると怖がられるし、一般人が購入できるお札では威力が足りなくて陰陽師や強力な霊媒師の方でなければ倒せないので、結局なかなか贖罪が完了しないのだとか」