まあ、ともかく長話はする必要はない。
さっき言った通りガキだけで長時間こんなところで話し込んでいるのはよくない。
英の家の使用人が車を回して日和を回収、帰宅していった。
わざわざ私と粦のことも家に贈ってくれて感謝。
はあ、やっと一息つける。
「お疲れ様です、お嬢様。今日の動画はどうします? あのー……結構、その、今までの動画のような編集ができないと思うんですけれども」
「そうじゃん! どうしよう!」
頭を抱える。
だいぶ想定していた内容の動画じゃない。
いや、結構まんねりな動画ばかりだから、変化があるのはいいことだけれどあんな無茶苦茶な内容、同編集したらいいんだ!
いや、諦めるのはまだ早い。
とりあえず撮影した動画を見て、上手いこと編集できないか試してみよう。
ただ、今回は本当に日和にはなにもせず見守っていてもらい、登場させる予定が一切なかったから動画の大部分はカットせざるおえない。
日和本人に出演を依頼したわけじゃないもん。
まあ、『動画にして動画サイトにアップしたいんですが』って言ったら多分喜んで出演OKを出してくれそうだし、むしろ自分がライブ動画を出したいとか言い出しそう。
お前もうそれ自分のチャンネルを開設しろって話しなんだけれども。
とりあえずカメラを預かり、夕飯までに動画のチェック。
案の定、出演の許可をもらっていない日和のド派手なワンマンライブ。
これはもう。本編九割カットだな……。
ある意味動画の編集は楽か? 楽って言っていいのか?
涙を飲みながら使えるシーンのみを抜擢すると、動画の時間が五分になってしまった。
もう長めのショート動画じゃねーか!
いや、待てよ……?
Vtuberといえばショート動画じゃない?
3Dの体があるなら『踊ってみた』とかの動画を作れるけれど、よくあ2Dの『歌ってみた』動画を準備してみるか。
そうだよね。
ショート動画もたくさん準備しておいて、私がVtuberデビューしたら毎日なにかしら投稿できるようにしておきたいよね。
投稿用スタックは多いに越したことないな。
とはいえ、『歌ってみた』はライブ2Dがないとやれる気がしないしな。
………………………………っていうか、私この世界の歌、全然知らなくない?
歌ってみたどころか歌を知らない、流行りも知らないヤバい。
「お嬢様~、お夕飯ができましたよ~」
「あ、ありがとう~。今行くね。えっと、今日はテレビを見ながら食べてもいい?」
「え? ですが、ちょっとお行儀が悪いのでは……」
「でもね、えのね、聞いてほしいんだけれど……」
正直せっかく買ったのに私は学校の勉強や動画の編集、Vtuberの準備や調べものでせっかくテレビを見る機会がないんだよね。
粦はテレビ見てるの、と聞いたら火事が終わったあとの週ドラマは見るようになったらしい。
中学のクラスメイトが話しているので、見てみることにしたら本当に面白くて最近の楽しみになっているそう。
そして、非常に可愛らしく照れながら「あの、そうしてドラマを見るようになってから……と、友達が、できました」とお盆で顔を隠しながら報告してくれた。
思わず目を丸くして見上げてしまう。
自分の幸せを後回しにしていた粦が――。
「お、おめでとう!!」
「あ、ありがとうございます。私にはもったいない綺麗な人で……し、しかも、あの有名な大離神宗家のお嬢様なんです」
「えええええ!? す、すごい!」
「は、はい。それで、実は、来週の日曜日に昔放送されたドラマのビデオを見る会に招待されまして……そ、その……」
「すごい! いいじゃない! 行っておいでよ!」
「ほ、本当によろしいのですか? わたし、お仕事ができないかもしれないのに」
「ご飯なら作り置いておいてくれたら私ちゃんとレンジであっためて食べられるもの! 粦がお友達と遊ぶ方が優先よ!」
我がことのように飛び跳ねて喜んでしまう。
すごい、よかった! 粦に友達ができた!
若干……、若干大離神宗家のお嬢様がなんで? って思うけれど、粦の素朴な感じに癒されたんじゃないだろうか?
あと、大離神宗家って日和の親戚かな?
日和が大離神家の宗家の人間なのか本家の人間なのか、分家の人間なのか……わからないんだよね。
ゲームの中でもそこまで詳しく言ってなかった。
なんにしても、粦が自分らしく生きられるようになっているのは本当に喜ばしい。
いいねえ、青春だよ。
そして――やっぱりテレビで流行りを把握するのは絶対必要じゃない?
なんなら私自身が同性の友人がいないという事実に変な汗が出てきた。
「私も話題作りのためにテレビを見る時間を作ろうと思うの……それで……だから、確かにちょっとお行儀は悪いかもしれないけれど、お夕飯を食べながら見てもいい? もしもそれで夕飯を片づける時間が遅くなるようなら、私もお片づけを手伝うから」
「そんな! 大丈夫ですよ! お嬢様がかってくださった食洗器に入れれば、あとはお風呂掃除だけなので!」
「でも……」
「お気遣いありがとうございます。でも、家事はわたしの仕事なので! 取らないでくださいね」
「あ、はい」
それを言われると〜!
まあ、それなら粦にお任せしよう。
そして今日はご飯を食べながらテレビを見よう。



