ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


「今日からよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
「はい、どうぞよろしくお願いします。本日の修行は林の内側浄化、第一弾です!」

 翌日、連絡が取れるようになったので御愚間(おぐま)(すぐる)を呼び出した。
 (すぐる)は真智曰く、十夜と逆隣のクラスと言っていたが一学年上――小学二年生。
 よくよく考えると小学一年生が学年とか年齢とか判断つくわけがなかったなぁ。
 とはいえ、私たちより学年が一つ上だとしても(すぐる)が小学校低学年なのは間違いない。
 御愚間(おぐま)家の使用人が一人、絶妙な距離で佇んでいるのだが(すぐる)いわく『ただの運転手』だから置いていくんだって。
 おとなが一人いるだけでも心強いけれど、運転手さんも霊能力のない人。
 じゃあついてきても危なくなった時、役に立つわけじゃないか。
 しかし、人一人増えただけでプレッシャーがすごいな。
 この中で霊能力があって、万が一の時みんなを守れるのは私だけなんだ。
 粦も強い霊力はあるけれど、別に霊能力者としての修行をしているわけではないから霊の対処はできない。

「えー、新しく修行につきあってくれるスタッフが増えましたので、ご紹介しまーす。(すぐる)くんです!」
「初めまして、(すぐる)です」
「私の弟子みたいな感じで、林の浄化を手伝ってくださいます。それでは新しいスタッフも参加しましたので、私の修行について改めてご説明しようと思います」

 撮影は粦に任せ、音声を入れる。
 と言っても、ガワが完成したら動画にライブ2Dで実況を入れる予定なので画だけ中心的に撮影してもらう。

「はい、画像は撮り終わりました。尺も十分かと」
「ありがとう、粦。それじゃあ奥に……いくよ」
「はい」
「あ、悪霊と戦うんですか?」

 少し怯えたような(すぐる)
 いやいや、いきなり悪霊と戦うのは無理無理。
 首を横に振る。

「この林の外周を浄化していくの。一番外側が終わったから、そこからもう一段階内側を浄化していくのよ。それで中心部にいる悪霊の力を削ぐの。私でも祓えるぐらい」
「じゃあ、いつかは戦うんですか」
「うん。それが本家に課せられた、私の課題なの」

 そしてそろそろ、近くの橋に巣食う悪霊も祓う準備を始めなければならないと思っている。
 林と同じく橋の両端を浄化するところから。
 でも、林の内側ぐらいの澱みが、橋の入り口に漂っている。
 あの橋、この林とは桁違いに穢れているのだ。
 橋の中央にいるという悪霊も悪魔に近いらしい。
 ついでに、粦に偵察に行ってもらった最新情報によると林の悪霊と同等の悪霊が二体に増えているとかいないとか……いや、間違いなく増えているっぽいんだけれども。
 おそらく橋の中央にいる悪霊が強くなったことで、澱みが深くなって他の“悪いもの”が寄ってきている状況に“進展”してしまったのだろう、と。
 つまり放置すればするほどあの橋は悪化する。
 私の課題と秋月は言っていたが、あまりにも状況が進行したら私の手には負えなくなるだろう
 だから今のうちに――敵がこれ以上強くならないように橋の入り口を両方浄化する!
 もちろん林の悪霊も放置はできない。
 浄化を続けて弱らせて、私でも浄霊できるくらい弱くする。
 とりあえず今日は継続している林。
 明日は橋の我が家側を浄化する。
 で、明後日は特に予定がなければ橋の反対側。
 入り口を浄化するだけで、それ以上悪化することがなくなるのだから効果はでかい。
 まあ、浄化した場所がすぐ汚染し返されるようなら話は変わってくるけれど。
 昼間ならそれほど悪霊たちも強く抵抗ができないはずだし、陽の気がある間はこっちがアウェイなんだから浄化に失敗することはまずない。

「〜〜〜〜」

 手を合わせて、中心部への第一歩……浄化を行う。
 特に問題もなく浄化作業は終わったのだが、中心部の方からゴニョゴニョと声が聴こえてきた。
 悪霊の声、っぽい……。
 女の人の声?

『なんで、なんでなんでなんで……自由に生きさせてよ、許せない……許せない……ううう……許せない……なんで捨てるのよ……』

 よーーーーく聞き耳を立てた結果、なんかそんな感じのことを言っていた。
 この人はなにをそんなに怒っているのだろう?
 捨てられた?
 恋愛の拗れだろうか?
 でも、自由に生きさせて?
 なにかに縛られていたのだろうか?
 だとしたらなんとなく、他人事ではないよに感じた。
 私も実家に縛られている。
『宵闇の光はラピスラズリの導きで』のストーリーに。
 今も――。
 でも、自分の力でこじ開けて見せる。
 私の未来は私で変える!
 理不尽なんかに負けてたまるか!
 ……あなたはなんで戦わなかったの?
 今も戦えないままなの?
 私が質問しても、答えが返ってくることはない。
 そういうこと――霊との対話は善岩寺(ぜんがんじ)家のような霊媒師の専売みたいなものだから。
 私の声は、残念ながら彼女に届かないみたい。

「浄化は無事に終わりです。明日は新しい場所を浄化に行くことになると思います」
「橋ですか?」
「橋?」
「はい。うちの近くに悪霊が住む橋があるんです」

 林の中心部に向けた浄化第一弾は無事に終わり、林から出て荷物の整理。
 明日の予定を伝えると、粦は心配そうな表情で(すぐる)は首を傾げる。
 橋のことを説明すると、(すぐる)には眉を寄せられた。

「悪霊が二体以上いる場所はおとなと行った方がいいと思います」
「わかります。でもこれが課題なの。少しずつ時間をかけて浄化していつもり。それに、夜にやるわけじゃないから」
「でも、危ないです。それでも行くというのなら――知り合いにかけあいます。子どもだけでは危険です」
「知り合い……?」