ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


「そ、それ本当?」
「本当。私の師匠が言っていたの。霊能力がない人は、チャンネル――発信している霊との受信アンテナがまったく合わない人なんだって。でも、レベルの高い霊能力者さんはその受信アンテナが常に霊と合っているから、その人と一緒にいるとアンテナが合いやすくなっていくんだとか」
「っ……」

 もちろん、霊媒師さんと祈祷師ではアンテナの種類が違うのだろう、感じるものが違う。
 十夜は霊の姿も声もわかるが、私は存在がやんわり感じられて声が聴こえるだけ。
 真智はどうなのか聞いたことがないが、多分存在が感じられるだけで声も姿もわからないのではないだろうか。

「あの、あのね、私、今住んでいる屋敷の裏の林にいる強い悪霊を祓うことを課題にされているの。で、その過程を動画に証拠として残していこうと思って、日々の浄化の様子を録画しているの。もしも(すぐる)くんがよかったら、私の浄化修行につき合わない? 私、霊力高いらしいから、もしかしたら開花のお手伝いができるかもしれない」

 御愚間(おぐま)(すぐる)は大器晩成型。
 霊能力が開花しないわけではないのだ。
 それはゲームのストーリーでわかっている。
 彼自身が自分の開花のしづらさを理解して苦しむ姿は、痛々しかった。
 どのくらい昔から寺院で修行しているのかはわからないが、ゲームストーリーの中で修行中のスチルが出た時は一人で黙々と坐禅を組んでいるだけのようだった。
 だから、秋月に聞いた方法――高い霊力を持つ能力者に同行するのはどうだろうと提案したのだ。
 まあ、ぶっちゃけて言うとVtuberとしてやっていく上で商売人をやっている(すぐる)と仲良くなっておけばマイクやカメラやカメラアームやマイクアームなんかを買う時に予算内のいいものを見繕ってもらえたり、撮影の荷物持ちについてきてもらえないかなぁー! とか、下心たっぷりなんですけれども。
 だってほら、今は粦にカメラも荷物も持ってもらって撮影も任せていけれど、さすがに十四歳の女の子に持たせるには重すぎるでしょ。
 もう一人スタッフがいてくれたらなー、って思っていたの。
 もちろん自分でも荷物は持つよ?
 でも小学一年生には限界があるの。
 こうして浄化用のグッズ――修行に必要なもの、撮影に必要なものが増えれば増えていくだけ人手はあって困るものではない。
 そう! 私の目的は動画撮影に(すぐる)を協力させることなのだ!
 真智と十夜は小学一年生男児らしく、撮影中騒がしそうだからね!
 本来の性格が寡黙な(すぐる)なら絶対撮影の邪魔はしないでしょう!

「ほ、本当にいいの? 本当に? 迷惑にならない……ですか?」
「も、もちろんその代わり私の修行の手伝いもしていただきますよっ」
「もちろん! 本当にいいんですね!」
「はい! あ、ご家族には、私の修行を手伝う代わりにどんな浄化グッズが必要なのかを見極める、みたいに言えば許可してもらえると思いますから」
「あ……ありがとうございます!」

 あれ? (すぐる)って敬語キャラだっけ?
 確かに商売人ではあったけれど、ゲーム内の御愚間(おぐま)(すぐる)は気さくなお兄さんキャラって感じだったんだけれどな?
 こう……主人公に素の自分を見せるようになってからも、頼れる兄貴感が増したって感じで……。

「さあ、それじゃあ真宵ちゃん! 買うお鈴は決めたかしら?」
「はい! お鈴はいらないので、携帯電話がほしいです!」
「へぁ?」

 いや、まあ、自分でもとんでもねぇことを言っている自覚はある。
 しかしながら色々考えた結果――

「連絡が誰とも取れなくて……いつも困っているので……」
「確かに」

 十夜母、恐ろしい速度でこくりと頷きながら納得してくださった。

「そうよね、そもそも今日も十夜経由でお誘いしたものね。真宵ちゃんが住む別邸には固定電話すらないのでしょう?」
「は、はい。本家は私を孫とは認めてくださっておりませんので……」
「はあ……今時『女だから』とこれほどの霊力を持つ子を跡取りとして認めないなんて、時代錯誤もいいところだと思うけれど……。礼次郎様も真宵ちゃんにはなにもしてくれないのね」
「はい。父には――新しいお嫁さんが来ているらしいので」

 頰に手を当てて言うと、御愚間(おぐま)家の熱がわかりやすく引いていくのが感じられた。
 私や十夜母なら御愚間(おぐま)家族のその様子で、彼らがなにを考えているのかだいぶわかるのだが、霊能力がない人には“バレてない”って思われるんだろうなぁ。
 まあ、この人たちの前で『真宵は金蔓にならない』ってわかってもらうついでに『千頭山(せんずやま)家は一人娘を別邸に追いやって新しい嫁とよろしくやっている』ってとこほを把握していてもらう。
 これは十夜母も思うところはあると思うが、少しずつ千頭山(せんずやま)家に起こっている異変を把握してもらうようにする作戦。
 鬼ババアの中に悪魔が取り憑いているのは十夜の家族――善岩寺(ぜんがんじ)家のご家族も同意見。
 そして、善岩寺(ぜんがんじ)家も『六家』の中では下位。
 決定権はほぼない真智の家、宇治家(うじいえ)家と善岩寺(ぜんがんじ)家、そして千頭山(せんずやま)家ではあれど私にも。
 御愚間(おぐま)家は家格でいえば上から五番目。
 だから、家格で千頭山(せんずやま)家にとって同等である安倍家か大離神(おおりかみ)家になんとか私の現状を届かせなければならない。
 鬼ババアの耳に入れないように、慎重に。

「そのようお話し、こちらでされてよろしいのですか?」
「あら? 他言なさるの? 千頭山(せんずやま)家のお家のお話なのだから、ねえ?」
「さようでございますね」