ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい


 曲がりなりにも商売人。
 でも、若干詐欺っぽい。
 家族のハイテンション営業を苦手ながらもつき合いでやっていた(すぐる)にとってみたら、家族がこんな詐欺まがいのことまでやっていたら気分は余計悪いだろうな。
 すごいすごい、素晴らしい素晴らしいと褒めちぎってくる御愚間(おぐま)家族に苦い笑いでしか対応できない。
 御愚間(おぐま)家の事情はよくわからないけれど、少なくとも寺院――修行場所や仏を崇拝する場所や、商売で金銭的な支援を業界にしているイメージ。
 霊能力がなかったら、それはもう一般人だもんね。
 業界から一歩出たら、前世の世界のように普通に生活している人ばかりなのだろう。
 ……まあね……私だって、元々、前世の私はそうだった。
 こんなオカルト界隈とは無縁の生活。
 いや、まあ、都合のいい時は――お正月にはおせち食べるし二月の節句はお雛様のお菓子食べるし、三月の春分の日は祝日アザース! って休んでたし、五月はゴールデンウィークキターーーー! ってはしゃいでたし、お盆休みウェーーーイ! って満喫して九月は敬老の日・国民の休日・秋分の日が重なったらわっほほぉーい! って両手を掲げたし、縁日の屋台にはハシゴするし、十月はハロウィンのお菓子をもしゃもしゃし、十二月はクリスマス、大晦日でそれぞれ洋食和食を堪能するけれどさぁ!
 宗教系のイベントも満喫する、お祭り大好き日本人だけどー!
 多分この世界はそういうものよりも、もっと鎮魂や反転巫女をお慰めするイベントもある。
 御愚間(おぐま)家はそういうイベントの後ろ盾になる大事な家。
 そりゃあ霊能力者がいなくたって、『六家』に数えられる家なのは当たり前だろうな。
 しかし、突然ヨイショされ始めたのは気持ちが悪い。
 私は確かに名士、千頭山(せんずやま)家の苗字を名乗っているが、当主である鬼ババアに孫として認められていないのだ。
 そんなにヨイショヨイショされても、私からはなにも搾り取れないぞ。
 今回だって、十夜母の奢りだからな。

「もしよろしければ、こちらの15:85のお鈴――定価九十二万円――はいかがでしょう」
「そうですわ! 真宵お嬢様ほどの霊力を持つお方には、このくらいのお鈴であれば十分一生使っていけると思います!」
「お鈴だけではなく経本もいかがですか? 真宵お嬢様にはまだ重くて扱えないかもしれませんが、子ども用のものでは真宵お嬢様には物足りないでしょう」
「そうですな! ああ、お札はいかがですか? お札用の和紙もお取り扱いしております。お筆と墨、重しなど今から取り揃えておくと絶対に役立ちます!」
「い、いえ……あの……」

 グ、グイグイキタァー!
 御愚間(おぐま)家族が「あれも、これも」と様々な浄化グッズをカタログで見せてくる。
 いつの間にカタログ!?

「ママに電話するねー。買うもの決まったら、呼んでーって言ってたから」
「ぐっ……そ、そうだねー」

 子ども相手だからと色々強く出てきたが、十夜が『母を呼ぶ』と言った瞬間固まる。
 しかしすぐに御愚間(おぐま)家の皆さんはすぐに持ち直し、「ではすぐに店舗に戻りましょう!」「お鈴はこちらでよろしいですか!?」とか言い出したのでうんざりとしてきた。
 なんか、なんだろう……十夜の家もやかましくてうるさくて耳がしんどいんだけれど、御愚間(おぐま)家の方はなんかこう……溢れ出る商魂を隠す気がなさすぎるというか……!
 隠の気というわけではないのだけれど、いい気というわけでもないというか……!
 ああ、そうだ。
 十夜の家は陽の気が溢れていたから気にならなかったんだ。
 でもなんか御愚間(おぐま)家は陽の気ではないか、ドン引きしちゃうんだ、多分。
 まあ、でも店舗に戻るのは賛成だ。
 買い物をするのに用水路の横は無理でしょ。
 てとてと全員で店舗に歩いて戻る。
 十夜がいつの間にか携帯電話で十夜母を呼んでいたからか、すでに店舗に十夜母の姿。
 大変元気よく「やっほー! 真宵ちゃーん! お鈴決まったかなぁー!」と手を振ってくれる。
 ううっ、眩しい……!
 陽の気が一気に流れ込んできた!

「どうもどうも、善岩寺(ぜんがんじ)の奥様! 本日はご子息の婚約者の方が――」
「ええ、そうなの! うちの末っ子の婚約者になってくださったら嬉しいのだけれど、まだ気が早いと夫に叱られてしまってね! そりゃー確かにー! ってことで、十五歳くらいになったら改めてお話しさせていただこうかなってまずは好感度上げしようと思ってね! やっぱり事前投票は必要かなって!」
「さすが! 素晴らしいお考えですわ!」

 ああ、よかった。
 ヨイショ対象が十夜母になった。
 ほっと胸を撫で下ろしつつ、ふと真後ろを見ると急におとなしくなった(すぐる)が目に入る。
 なんか、落ち込んでない?

「あの、大丈夫……?」
「え? あ……だ、大丈夫です! どうかお気になさらず、商品をお選びください!」

 あ、しまった。
 スイッチ入ってしまった。
 (すぐる)は元々おとなしい性格。
 家族の営業テンションに合わせがち。

「う、うん。あの、それはそうなのだけれど……あの、ひ、ひとつ聞いたことが、あるんだ」
「え? なにがでしょうか?」
「あの……強い霊能力者の側にいると、霊能力が開花しやすいんだって」
「え――」

 これはマジらしい。
 実は攻略対象の破滅エンド回避を思案していた時、なんとなく(すぐる)の場合はどうするのが正解なのかを考えて秋月にそれとなく聞いた時に聞いた話。
 霊能力は高い霊能力を持つ人と一緒に修行すると、引っ張られて開花しやすくなるのだそうだ。
 たとえば霊能力ゼロの人も、高レベル霊能力者と一緒に心霊スポットなどに行くといつの間にか霊力が高まり霊の姿が見えるようになったり声が聞こえるようになったりするのだとか。