夜。
ベッドの上で、イナは天井を見つめていた。

(どうして今日、ホクロが消えたんだろう?)

ふと思い返す。
——前に消えたときも、マサキにときめいた夜だった。

(もしかして……私の気持ちで、ホクロは動く?)

翌日の昼。
中庭でマサキと並んでお弁当を食べながら、
イナは嬉しそうに話した。

「マサキ!今日も私、ホクロないんだ!
だから今日も平和だね」

「うん?」

「ホクロがあってもなくてもマサキが変わらない理由、マサキが発見してくれたでしょ?
次はね、
ホクロがある日とない日の違いはなんだろう?って思ったの。」

「たしかに‥きまぐれ?」

「んーん、ちがう。
わたしがマサキにときめいてると
ホクロがないの!」


マサキが箸を止めた
「え??」

「昨日の返事!
もう一生ホクロが出てこないように毎日ときめかせてね!」

マサキは耳を真っ赤にした


二人の笑い声が、春の風に溶けていった。