帰り道。
茜色の空の下で、マサキが急に立ち止まった。

「なぁ、イナ」

「ん?」

「俺、あのあと考えたんだ」

振り返ると、彼は真っすぐに見つめてきた。
「なんで俺だけ変わらないのか」

イナは息をのむ。

「ホクロがあると、みんなお前を好きになる。
でもホクロがないと、誰も気にしなくなる。
……けど俺は、どっちでも変わらない」

一歩、近づく。

「俺は——ホクロがあってもなくても、イナが好きだから」

風が止まったように感じた。

え……今の、これって……?

「返事はすぐじゃなくていい。
でも、ホクロがあるうちは、他のやつと一緒に見られそうだから。
消えてる時に、ちゃんと伝えたかったんだ」

夕焼けが、彼の輪郭を金色に染めていた。