放課後。
チャイムが鳴り終わり、帰り支度をして廊下に出た瞬間、ざわざわと人の気配が押し寄せてきた。
「イナちゃん、帰り?」
「ちょっと話そうよ」
いつものことだ、とわかっている。
男子たちがまた群がってくる。
(目を合わせない、立ち止まらない、触られないように……)
俯いたまま、ひたすら歩いた。
けれど——。
ん?
違和感。
聞こえる声の高さ、足音の軽さ。
混じってる……女の子の気配が。
思わず足を止めると、前に立ちはだかったひとりの女子が、ぎゅっと眉を寄せてにらみつけてきた。
「ちょっとさ……あんた、昼休み松本くんといた!?」
鋭い言葉に、背筋がぞわりと凍りついた。
周りを見ると、他の女子たちも小さな輪をつくって、無言のまま視線をぶつけてくる。
(やば……!)
心臓が跳ね、反射的に走り出した。
⸻
「イナ?」
理科室の扉が開き、倉田先生が顔を出した。
柔らかい笑みを浮かべていたけど、今はその存在すら恐ろしく見えた。
「!?むり!!」
肩をすくめ、視線を逸らす。
無視して、そのまま走り去った。
廊下の足音が遠くで反響している。
胸元のほくろが、熱を持っているような気がした。
(……どうして、私ばっかり……!)
次の瞬間、涙がにじみそうになった。
チャイムが鳴り終わり、帰り支度をして廊下に出た瞬間、ざわざわと人の気配が押し寄せてきた。
「イナちゃん、帰り?」
「ちょっと話そうよ」
いつものことだ、とわかっている。
男子たちがまた群がってくる。
(目を合わせない、立ち止まらない、触られないように……)
俯いたまま、ひたすら歩いた。
けれど——。
ん?
違和感。
聞こえる声の高さ、足音の軽さ。
混じってる……女の子の気配が。
思わず足を止めると、前に立ちはだかったひとりの女子が、ぎゅっと眉を寄せてにらみつけてきた。
「ちょっとさ……あんた、昼休み松本くんといた!?」
鋭い言葉に、背筋がぞわりと凍りついた。
周りを見ると、他の女子たちも小さな輪をつくって、無言のまま視線をぶつけてくる。
(やば……!)
心臓が跳ね、反射的に走り出した。
⸻
「イナ?」
理科室の扉が開き、倉田先生が顔を出した。
柔らかい笑みを浮かべていたけど、今はその存在すら恐ろしく見えた。
「!?むり!!」
肩をすくめ、視線を逸らす。
無視して、そのまま走り去った。
廊下の足音が遠くで反響している。
胸元のほくろが、熱を持っているような気がした。
(……どうして、私ばっかり……!)
次の瞬間、涙がにじみそうになった。



