なぜか3人でご飯を食べている。

「イナちゃんが中庭行くなんて思ってもいないからさ、お弁当教室に置きっぱなしだよー」
とイナのおにぎりを分けてもらいながらキラキラ笑顔で松本は話す。

「とりに戻ればいいじゃないですか! ていうか、教室で自分のお弁当食べてくださいよ!」
マサキが思わず突っ込む。

「いつもこんな口うるさい人と食べてるの?」
松本がイナに問いかける。

「口うるさい」って言葉があまりにも的確で、イナは思わず「ハハ!」と笑ってしまった。



そのとき。

「松本くーん!」
校舎の窓から甲高い声が響いた。

見上げると、女の子が三人ほど身を乗り出して、キャッキャと手を振っている。
視線の先はもちろん、松本先輩。

「……あー、やば」
松本は少し肩をすくめて笑った。

「マサキくん、だっけ? 君がいてくれて助かったよ」
「は?」

「もしイナちゃんと二人だったら、“女と二人!?”って、親衛隊がどう出るか分からなかったからね」

マサキは額に手を当てて、心底うんざりしたようにため息をついた。
「……だったら尚更、教室に戻ってください」

松本先輩は、にこにこと悪びれない笑顔を浮かべたままだった。