昼休み。
校舎の片隅で、スマホを耳に当てながら小さく笑っていた。

『ちゃんと食べてるか?』
「えっ、食べてますよ!」
『……また昼休み、追いかけられてたんだろ 笑』

ほんの短いやり取り。
でも、電話の向こうの落ち着いた声が耳に残って、心臓が妙に騒がしい。

(最初はただの“確認”だったのに……)
(気づけば、時間さえあれば電話がかかってくるようになってた)
(“特別な一本”だったはずが、今じゃ“当たり前”になってる……)

「……大丈夫!撒きました 笑」

そのとき。

「イナ、お待たせ!」

振り返った瞬間、マサキの姿が見えて、思わず指が震えた。
慌ててスマホの画面をタップする。ピッ、と通話が切れる。

「今、電話してた?」
「え……あ、うん。友達!」

できるだけ明るくごまかした。
でもマサキはじっと目を細めてくる。

「……ふーん。友達、ね」

その声音に妙な重みを感じて、心臓が跳ねた。
けど私は笑顔を崩さず、トレーを持って学食へ歩き出す。

(大丈夫、大丈夫……これはただの電話。秘密なんかじゃない)